others
□トリックオアトリート
1ページ/1ページ
「あっ!それ美味しそう!トリックオアトリート!」
台本をめくりつつチョコレートをつまんでいると、相葉くんがぬっと現れた。さすがスイーツ部……お菓子の匂いには敏感なのだろうか。
「そのお菓子くれなきゃイタズラするよ!」
「イタズラ?何するの?」
「ええっ!?……特に考えてなかった」
相葉くんは頭にコツンと拳をあてて、ヘラヘラ笑っていた。なんだそのリアクションは。
「古いな〜(笑)」
「うるさいな、もう!いいから頂戴それ!沢山あるし、ひとつくらいダメ?」
貰う気満々で口を開けながら顔を寄せてきた。あぁ、なんて美味しそうな……思わず見蕩れた。そんな艶めかしいところを簡単に人に見せてはいけないな。塞ぐようにチョコレートをひとつ入れてみる。
「あっ、おいし〜。ありがと!」
貰うだけ貰ってさっさとどこかへ行こうとする相葉くん。それじゃあ不公平じゃないか。あんなもの見せられて……俺だって食べたい。
「待って、俺にも頂戴」
手首を掴んで引き止めると、相葉くんは驚いた顔でこちらに振り向いた。
「え?俺いまお菓子持ってない……」
隙をついてそっと唇を重ねると、チョコレートを食べたばかりのそこは微かに甘かった。
「ん……ダメだよ、こんなところで」
「だって美味しそうだったから」
恥ずかしそうに、でも満足気に笑う可愛い君を、今すぐ食べてしまいたい。