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□Yes, sir.
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「おいで、雅紀」
その声とせっけんの香りではっと目が覚めた。お風呂上りのご主人様は、あたたかくて肌がもちもちで、すり寄るといい匂いがしてとても気持ちがいい。彼がひざをトントンと叩いて、俺はそこめがけて突っ込むようにスキンシップをせがむ。くすぐったいだろ、と彼は笑って俺の頭や顔を撫でてくれた。甘くて優しいこの時間の次に待っているのは、危険で背徳的な、絶対主従の時間。
「あぁ……雅紀、さっきは外を眺めていたけど、星がよく見えるね」
「はい」
「……身体が疼くよ。ねぇ、こんなきれいな夜はさ、俺は二人きりで誰にも知られず、ケダモノみたいに野蛮で酷いことがしたくなる」
「ぐ、ぅ……ぁ、あっ」
ご主人様は俺の首元にぎゅうっと噛みついて歯型をつけたようだ。痛くて鈍い声が思わず出たけど、やめて、だなんて言ったら彼を怒らせてしまうことはいい加減分かっていた。こんな関係が始まってすぐの頃は、抵抗して、その罰として暴力を振るわれて、つらくて泣き叫んでいたものだった。彼と良好な関係でいるには、俺が幸せになるには、ただ彼のしもべとして正しくいればいい。何でも言うことを聞いて、彼の望む行為を、すべて受け入れればいい。そう思って過ごしていくうちに、俺はこの主従関係も自然と受け入れられるものになっていた。
「雅紀、おしりこっちに向けて」
「はい……」
腰を掴まれ態勢を直させられて、俺はご主人様のひざに尻をのせた。指で曲線をなぞられて思わず身体が震えると、彼はクスクス笑って、まずは思い切り平手でぱちんと尻を叩いた。
「アッ……!」
「良い声……もっと聞かせて」
ご主人様は何度も何度も俺の尻を叩いて、とっても楽しそうにしていた。痛いけど、笑ってくれるならそれでいいと潤む視界の中で考えていた。そこで朦朧とする意識が急に戻されたのは、彼が突然俺のペニスをぎゅっと掴んだからだった。
「おしり叩かれてこんな風になっちゃったの?恥ずかしいねぇ」
「ご、ごめんなさいご主人様……」
叩かれて真っ赤になった尻と、ぴん、と屹立したペニスをまじまじ見られて鼻息が荒くなるほど興奮した。ご主人様の視線が痛くて、気持ちよくて、すごく恥ずかしい。恥ずかしいのが気持ちいい。もう何をされても快楽だと感じてしまう身体になってしまったのは、ご主人様の調教の賜物だ。
「こんなにエッチな犬、何度お仕置きしても足りないよ」
ご主人様は俺を仰向けに寝かせて、後足を開かせた。ペニスもアナルもよく見えるみたいで、彼も興奮した様子でじっくり見つめていた。視線だけで犯されているみたいでたまらない。彼はベッド脇のチェストに置いてあったスマートフォンを持って、レンズを俺に向けた。
「お前のいやらしい姿、ここに記録しておこうか」
「えっ……」
「聞こえなかった?ほら、始めるよ」
「は、はいっ」
録画開始の効果音と同時に、ご主人様はスマートフォンを持った手とは逆の方で、俺のペニスをこすった。彼のごつごつした指が生ぬるくて、的確に俺が感じやすいところを何度も押されて、意識しなくても身体が自然に捩れてしまう。
「あはは、感じてるとこ撮られて……気分はどう?」
「あっ、ぁ、すっごい、気持ちぃ、です……んっ」
我慢汁で亀頭をくちゅくちゅと弄られて射精感がかなり高まったと同時に、ふいに催してきてしまった。いけないと思いつつも途中で止めるのが嫌で、ただ今はご主人様が与えてくれる快楽に喘いでいたかった。ああ、ご主人様、ごめんなさい――
「う、うぅ……!」
「ん?おい、雅紀……!」
俺はご主人様にペニスを弄られながら、我慢できずに漏らしてしまった。出てしまったものはそのままベッドに黄色いシミを作っていく。ご主人様も撮影の手を止めずにずっと見ていた。全部出し終わって茫然としているとご主人様が口を開いた。
「ねぇ、これ何?」
「え、あ、あの……」
「なぁに?」
「おしっ、こ……です……」
「ふふ、ベッド、汚れちゃったね」
ご主人様はスマートフォンを元に戻して、改めて俺に向き直って、俺が悪いことをしたときに言うべき言葉を待っていた。
「申し訳ありませんご主人様。どんな罰でも受けさせてください」
「そうだね、どうしよっか」
ご主人様は少し考えて、いいことを思いついたとばかりににやけて俺のほうを向いた。急に組み敷かれて驚いていると、キッと睨みつけて怖い顔をしていた。怒らせてしまったときの彼は、誰にも止めることはできないだろう。
「痛い思いしないと覚えないよね」
俺はベッドから蹴落とされて床に四つん這いになった。追い打ちをかけるようにもう一度脇腹を蹴られて、俺はそこを抑えて縮こまり、部屋の端でうめいていた。ゆっくり彼が近づいてきて、次は何をされるのか、と怖くて震えていると彼は目線が合うようにしゃがみ、ニッコリ笑った。かえってそれが恐ろしくて俺は小さく悲鳴をあげた。
「逃げんなよ、今夜はたっぷり遊ぼうって言ったろ」
ご主人様は俺の髪をひっつかんで壁に頭を打ち付けた。痛くて怖いのに、気持ちとは裏腹に身体はおかしいくらいに興奮で熱くなっていた。その証拠に先ほど弄られていたペニスはいまだに元気で、彼に身体をつかまれ揺さぶられるたびに、ペニスが下腹部に当たってぺちんぺちんとみっともない音を出していた。
「ご主人様……もっと、もっと俺に罰を……」
「お前、罰がご褒美になってるじゃん。それじゃあ意味ない、けど……」
ご主人様の親指と人差し指で両頬をつままれ、むにゅ、とそのまま声が出てしまった。愛おしそうに顔を眺められて、改めて俺のご主人様は綺麗な顔をしているなぁ、と俺もまじまじを顔を眺めることができた。
「雅紀は俺のこと大好きだから、何されても嬉しいんだよな」
「はい、大好きです、ご主人様」
「大好きなご主人様の言うことなら何でも聞くよな」
「もちろんです」
「……足開け。お前の尻の穴壊れるまで犯す」
ご主人様は自身のペニスを俺に突き付けて、濁った目で俺を見ていた。闇に支配されてしまったような、病んだ目。まともなセックスじゃ彼も俺ももう満足できない。彼は俺が快楽に抗えないことを知っている。俺の扱い方を知っている。だからこそ、俺は彼の虜になっているのだ。極上の快楽は、この人が与えてくれるものと、この人に仕えること以外ありえない。俺は最高に幸せな飼い犬だ。
「はい、かしこまりました」