Novel(Feature)
□「初日の時間」-Men should aim-
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「__という訳で今日から、厳密には昨日からここに通うことになりました、キノです。同じくこっちがエルメス」
「どうもねー」
「「いや、だからなんでバイクが喋るの!?」」
「こいつはお喋りな性格なので...」
「それだけで許されることなのかなぁ...」
昨日と変わらない調子でキノとエルメスが自己紹介をする。
少し変わったといえば、キノの服装が女子生徒の制服になったくらいだ。
「女子だったのか...」「やっぱり!私の目に狂いは無かったわね!」と生徒が朝話していたのも恒例。
一部では女子の青春が悲しく散ったとの噂もあるし、また男子の青春が始まったとの噂もあるらしいが僕は特に深入りはしなかった。
「それではキノさん。席へどうぞ、エルメスさんも一緒に」
「はい、分かりました」
「......」
「......」
昨日と何らかわりない受け答え。
クラスメイトも「え、また撃つのあの子?」的な雰囲気が充満している。
殺せんせーも滝のように汗を流している。
キノが右腕を殺せんせーの額に向ける。
それだけで殺せんせーは壁際まで飛び退く。
キノの手には何も握られていない。銃の形を模しているだけだった。
「冗談です」
表情を変えずキノがそう呟くと、エルメスを押して指定された席の脇に立たせると呆気なくすとんと席に座った。
しかし殺せんせーがすぐに壁際から教壇に来ることはなく暫く「え、え?え?」と教壇とキノへ交互に視線を送っていた。
「殺せんせービビりすぎ!!」「昨日キノとの戦いの後の余裕は何だったの!?」
そう、昨日僕らは裏山でキノの敗北と転入を知った。
余裕な表情の殺せんせーと大量の学習道具を抱えて不服そうにしていたキノ。
殺せんせーはその場の勢いで「もうキノさんは恐るるに足りませんね。もっと対策をつけて出直してくださいね」と言ってはキノの頬やら頭やらを触手でつんつんつついていた。
その時のキノのそれはそれは不機嫌そうな顔を見て生徒全員で吹き出してしまったのを覚えている。
たとえ本物の銃の手応えを知り、未知の生物に臆することなく進んでいける人間も、与えられた教科書を抱えればただの生徒。
そして彼女の精悍な顔立ちの奥にまだまだ子供な所があるのも相まって、彼女に不服を申し立てる生徒は誰一人としていなかった。
「さて、それでは最初の授業を...」
「ねぇ殺せんせー、どうせならキノちゃんへの質問したいでーす」
「だね、それくらいなら良いでしょ先生?」
「にゅや、良いでしょう。クラスに馴染んでもらうのに良い機会です」
「よーし!じゃあキノちゃんこっち来てー」
「はい」
冷静沈着な旅人でさえ生徒にしてしまうこの教室。
新たな仲間を加えて、殺せんせーを暗殺するために協力していくのだ。
明日は、どんな風に殺そうか。