進撃のリヴァイ

□第8話 涙、飛び立つ。
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何か提案があれば、説明しろと再三言ってきたからリヴァイは話を聞いていたのかと、嬉しくなる。

思い詰めた様子を浮かべていたので、
突拍子ない提案をしてくると予想できている。

(…けじめの為に一人暮らしを提案してきそうだな。あの馬鹿。)


何故か分かる。リヴァイには手に取るように分かるのだ。でも、一生懸命に作って来ただろうから、話は聞いてやるつもりでいる。

家族との別れとなる。
それは、ステラにとってはとても辛い出来事になる。それの気持ちを無視して、行動に移そうとしている自分が最低な奴だと自覚があった。


グンタの事も、ステラの事も何かを得るためには何かを傷つけて、選ぶしかない。
だが、些か酷すぎる。

あの経験をしてきたリヴァイには、目を細め
俯いた。

(………欲しいと思ったものは、奪うだけだ。)


かつての戦いに、かつての別れに。
どの別れを忘れたことは一度もない。
彼は仲間を失い過ぎた。

最期まで傍にいた「ステラ」も、自分よりも早くに死んだ。病だった。 


その生まれかわりの今のステラはカフェで教科書を読んで自主勉強していた。
家に居るよりは気が楽だった。

(あ、この…羅列を使えば早くコーティングが出来るのか。そかそか。)


課題の提出には間に合いそうだ。
担任によると、ステラは平凡そのものだが、
課題はちゃんと提出する。

ノートパソコンにデザインを打ち込んでいく。

すると、鈴が鳴り扉が開く。
カランカラン。
ステラは振り返りもなく、パソコンと向き合っていく。

入ってきた人間は、グンタだった。
彼は気晴らしにカフェに入ってきたら、
ステラがパソコンに齧り付いている。

初めて会った時と同じポニーテール。
課題に真っ直ぐ立ち向かう。

グンタは帰ろうと思った。
だが、声をかけた。


「ステラ?」

「…グンタ先輩…ッ」


彼女はパソコンを開いたまま、申し訳なさそうに立ち上がり頭を下げる。
気まずくて仕方ない。でも、突っ立つままではいたたまれないので、彼女は誘おうとすると。

「……この間は、大変申し訳ありませんでした!!」

「………座ってもいいか?」


グンタはステラの向かいに座ってみた。
目の前に座り、彼女を見つめる。
気まずそうに、ステラも座る。

そして、メニュー表を差し出す。

「何か頼まれますか?」

「ありがとう…じゃ、コーヒーにするよ。」

店員さんにステラが呼んで頼んだ。
彼は変わらない彼女を見て、涙が出そうになった。

(………変わったのは俺なんだ………。)

欲しいと思ってしまった。
目の前のこの子を、体も心も自分のものにしてしまいたい。でも。叶わない。
出来なかった。

傍にいつも、リヴァイが居た。
リヴァイさえ、いなければ。

そんな思いも抱いていた。
だが、ステラは変っていない。
グンタに申し訳なさそうに聞いた。

「グンタ…先輩?……。大丈夫ですか?」

「……なぁ、ステラ。」


思い詰めた様に、グンタはそれから間を開けてからいきなり単刀直入に伝える。

「……部長とは、どう、なんだ。」

「…まぁまぁです。」

「…俺は……俺ッ…」


コーヒーが届いた頃に、グンタは涙目になって思いの内を打ち明ける。
ステラはそれを聞いて、思わずパソコンを閉じてじっと聞き入る。


「いきなり、すまん。」

カチャッとコーヒーに口を含めて、
いきなり言ってしまった。
もう。この想いよ逝きなさい。


「…俺は…ステラが好き…なんだ。」


カラン。と。その時に誰かが店に入ってきた。だが、グンタは気づかずステラも気づいていなかった。
消えるように呟いた。

彼女も優しいグンタの思い詰めた表情に、
悲痛の表情を浮かべる。

うん。と、頷く。
彼は相変わらず、優しいな。と、微笑む。
そうして、続けた。


「高校の時に、ステラを見てから可愛いって思った。……こっそりデートしてくれたろ。…嬉しかった。ありがとう。」

「……。」

こく。と、頷けば。
グンタは続ける。
遠くに店員の声がしたが、歩いてくる人物を見て店員はおどろいてた。

泣いていたから。
それにも気づかず、グンタは気持ちを打ち明ける。

「もっと、早くに伝えれば良かったな。」

「…」

「…あの時に怖かったろ。助けてやれなくてすまなかった。」


涙が溢れてしまう。
確かに怖かった、リヴァイが違う生き物に見えて怖かった。
それを見られていたことと、助けられずに謝られるこの気持ち。


彼女は声を殺して泣いてしまう。

でも、リヴァイはあの後に自分に優しく、そして激しく求めてきた。
それにも戸惑っていた。

もし。助けてくれたら結果は違っていたのかもしれない。

グンタは更に続ける。
怖かったのか。と、彼はリヴァイに怒りを抱く。

(…怖がらせて付き合うのは、違うだろう。)

彼は決意を固めるように、彼女に伝える。

「…ステラ…リヴァイさんと居て幸せか?」

「…え?」

「怖いって思ってるなら辞めたほうがいい。……こんな事を言いたくないが、部長は…お前に対して異常に思うよ。」


言ってしまった。
ステラは呆気に取られてしまい、
ペンを落としてしまう。
グンタに向かって胸ぐらを、掴む人間が、現れた。

オルオだ。彼はリヴァイの気持ちが誰よりも知っていた。彼もまた、記憶があったのだ。

「グンタてめぇ!」
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