進撃のリヴァイ

□第8話 涙、飛び立つ。
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ステラは目をきつくしてリヴァイに向かって声を張り上げる。
もう、本音を抑えることは辞めた、
もう、ヤケクソだった。

呼び方が兄ちゃんに戻っていた。
リヴァイはただ静かに聞いている。


「兄ちゃんの、馬鹿!!……ッなんで、…あんなことしたの?………怖かったんですよ。…… …なんで、いきなりなの?なんで?……ッ私の気持ちだって聞いてよ!!」


「…グンタに取られたくなかったからだ。」


グンタを見て静かに言った。
素直に言ってきて、一同驚いた。
内容がわからないがオーナーも店員も泣く。

そして、リヴァイは続ける。


「…お前の気持ちに気づいてた…それくらいしないと、お前は気づかないと思ったからだ。」


彼はスタスタとステラの方に近づいてきて、彼女はパソコンを慌ててしまって、逃げようとした。
だが、オルオは怒鳴った。


「もう逃げるな!…」

「…兄ちゃんなんか大嫌いだ!!……意地悪ばっかりして!…振り回すな!!」


思い切り叩くが、リヴァイはびくともしない。彼は彼女の手首を、掴んで再度伝える。


「…仕方なかった。」

彼は続ける。

「どうしたら、お前が振り向くか分からなかった。」


不器用な彼はどうしたらいいのか、分からなかった。でも、どうしようもなく彼女が好きで仕方なかった。

好きと言えなくて、リヴァイはこういった。


「お前が振り向くまで、誰にも渡す気はなかった。」


急に少年に見えてしまう。
彼女はびくともしない腕の力を見て、
リヴァイを見つめた。

傷ついてきた少年に見えて、
この場にいるのもやっとなんだろうと、思った。リュックから財布をだして、3000円出して店員さんに伝えた。


「お釣りはいりません。…お騒がせしてすみませんでした。」


ステラは涙を拭いてから、リヴァイの腕をいきなり掴んで歩き出した。
そうして、よろっと、立ち上がるグンタとオルオに頭を下げる。


「…グンタ先輩…苦しい気持ちにさせてしまって。ごめんなさい。…でも、打ち明けて下さってありがとうございます。嬉しかったです。…」


そして、オルオには本音で、伝える。
彼女にとっては、彼は本音で話せる兄なのだ。

「オルオは…お姉ちゃんと幸せになってほしいと思ってる。…お姉ちゃんの気持ちも大事だけど。…オルオは、私の大好きなお兄ちゃんだから。…お姉ちゃんのことで悩んでたら、連絡して。……私。この人と決着つけてくる。」


失礼します!と、彼女は扉を勢いよく閉じると。しぃん。と、静寂が蘇る。
オルオは涙を拭って、グンタに笑いかけるが、舌をかんだ。


「…飲もうげベッ?!」

「…今夜は付き合ってもらうぞ。」


グンタは涙を拭いてから、笑う。
オーナーは震えなら、話す。

「これ、もう、シナリオ大賞狙えるよね。」

オーナーは脚本家を目指していたらしい。



白い息が勢いよく吐かれている。
帰り道の夜道に、リヴァイを引っ張ったままステラはズカズカ歩いていた。

彼はただ彼女を眺めて、話しかける。

「ステラ」

「何ですか。」

「久しぶりに言ったな。」

「何。」

「兄ちゃんだ。」


彼女は、振り向いてリヴァイの頬を叩こうとした。でも、直前で止めた。
出来なかった。

ステラは涙をハタハタと落としながら、
リヴァイの胸ぐらを掴んで
伝える。


「なんなんですか。…」

「…」

「私の気持ち知ってて。あんな態度…いきなりキスして。ホテル連れ込んで、あんな真似して。いきなり……同棲しろって!……勝手過ぎる!!」


「…傍に居たかったからだ。」


悪いことをした少年のように、見える。
ステラはドンッと彼の胸を叩いて、
抱きしめる。

リヴァイは驚いたのか、震える体を抱きしめる。彼女は訴える。

「…怖いんです。……実家でるのが。……兄ちゃんと暮らすなんて。考えてなかったから。………ッ全て変わるのが怖かった。」

「あぁ。」


彼は目を閉じて、ひたすらに聞いた。
ステラはリヴァイの頬を両手で包んで眼光鋭く聞いてみた。

彼はあっさり答える。


「恨まれて、傷付けても…それでも私を選んでくれるんですか?!」

「当然だ。」

「アンタだって。あの家で暮らしたでしょう?」

「そうだ。…だが、お前の居ない場所で生きる気はねぇ。」

「気持ちが、重いんだよ!!」


彼女ははっきりつっこんだ。でも、
リヴァイを抱きしめて話しかける。
彼はこんな彼女が、好きだった。

自分の気づかない傷を、包むからだ。


「…不器用………ッ」

「…ッ」

「……私、ケジメで一人暮らししようって思ってました……でも、やめます。」


リヴァイはじっと…彼女を見つめる。
照れくさそうに、ステラはリヴァイの髪や頬をなぞってみる。

不器用に笑って見せて、それから
自分からキスをしてみた。


「……一緒に、殴られて下さい。」

「…馬鹿か。」


当然。と言ったようにキスを返す。
柔らかな。優しいものだった。
無言で抱き寄せていく。
この二人は不器用で、とてもとても。

小さいが大きい。
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