進撃のリヴァイ
□第8話 涙、飛び立つ。
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ここは、どこだろう。
あれ、高校の校舎。
こんな夕方に誰だ?
「や、止めてッ…止めてください!」
誰か嫌がってる…誰だ?
視界には教室が入ってきて、彼は手を伸ばして引き戸を開けてみる。
すると、高校生の頃のステラを眼鏡で白衣姿のリヴァイが無理矢理に襲っていた。
「…何を嫌がってる…感じてたろうが。」
「イヤッ!!………誰かッ…誰か助けて!」
ステラ?………部長いい加減にしてください!!
声が、出ない。
手が届かない。隙間から覗くしかできない。
それに、リヴァイは悪意に満ちた表情で彼女の胸に手を滑らせ、呟いた。
「コイツは…俺のだ。」
「うわぁああ?!!」
ぜー…ぜーッッ…グンタ・シュルツはパジャマ姿でうなされて、汗だくで飛び起きる。
一週間前に、上司が片思い中だった相手のステラをホテルに連れ込んだ際に言われた光景が悪夢になって焼き付いて離れない。
そして、こう思ってしまう。
(………部長が……俺だったら良かったのに。)
そう思って、頭を抱えた。
彼女に触れたかった。
ずっと、抱きしめて傍にいたかった。
高校3年の春から、彼女が好きだった。
入学式の後の新入生歓迎会で、生徒会の役員だったペトラから妹を紹介された。
あの時の可愛らしい姿を今でも覚えている。
明るい茶色の髪をポニーテールにし、
小柄な体で制服も、ブカブカ。
大柄な自分にないものばかりで、本当に可愛かった。
ペトラに思わず呟いてしまい、睨まれた。
「なぁ、ペトラ。…お前の妹…ちっちゃくて可愛いな……紹介してくれないか?…」
「グンタ……男にしか興味ないと思ってた……ッ。」
「はぁ?!!」
ステラはニコニコ笑って、子犬のようだった。それを見つめるなんか黒い怖い奴がいた。当時25歳になり、社会人3年目のリヴァイだった。
当時生徒会服会長だった、グンタは姉を迎えにきたステラに話しかられ、リヴァイを紹介される。
黒髪の童顔で小柄な男だが、只者ではない面構えで、怖いと感じる。
それに、一見姉妹を見守るように見えて違って見えていた。
「あぁ、この人はステラを見てるんだ。」
それに、時々俺を見て見透かされているように思え苦手だと感じた。
見るからに悪人面で怖いが、喋ってみると意外と話すし、口も態度も悪いが面倒見が良い。
まさか就職先で上司となるとは思わなかったが、厳しいが評価はしてくれる。
尊敬できる上司の一人だった。
だが、あのホテルの一件からグンタはリヴァイに苦手意識が強くなった。
いや、怒りや嫉妬に似た感情なのか。
彼は朝の4時に起きて、ため息をついた。
あれから返事が来ない。
彼女を思う。
(…………ステラ……大丈夫なのか……………ッ)
時々ペトラから話を聞いてみたが、
あまり元気がなく、新しいバイト先が忙しいらしく、四苦八苦していると聞いていた。
それに、ペトラもリヴァイから振られたと飲みに行った時に涙ながらに言っていた。
ステラからリヴァイとの関係を秘密にしててほしい。と、頼まれていて、口の硬い彼は黙っていたが。
(ステラ………ペトラに言い出しにくくて悩んでるんじゃないのか。)
その通りで、ステラは忙しく働くペトラと中々会えずに悩む時間が、増えていた。
母親もそれも気づいていて、
そっと話を聞いていた。
朝10時頃。平日の公園にステラと母は散歩にでかけていた。
茶のダウンジャケットに黒いブーツ。
シンプルな装いだが、母は軽やかだった。
ステラの方は青いコートに、黒のセーターにワイドパンツ。
ポニーテールにしている。
浮かない顔をしている。
彼女は木漏れ日のぬくもりに、気持ちの重さをごまかす。
「…木のしたって気持ちいいね。」
「……ペトラに言いづらいよね。」
「…うん。」
母は静かに聞いてみた。
日に日に言いづらくて、元気がなくなる娘を見かねて散歩に誘う。
学校は午後かららしい。
彼女はポツンポツンと話し出す。
段々と涙混じりになる。
「お姉ちゃんに言ったら…家族が壊れちゃう。…ッう…皆を傷付けてしまうって思ったら怖くて言い出せなぐでッ…。」
「そうだよね。…辛いね。」
「…勝手すぎるよね。リヴァイさん。」
「元々そんな奴でしょ。」
母のリヴァイに対する表情が、怖い。
マフィアが乗り込んで来たり散々振り回されてきたが、彼も大事な家族だった。
何かを得るには何かを喪う強さを、
彼は持っている。
(……アンタは覚悟があっても、この子は悩んでるじゃないの。馬鹿。)
母がペトラそっくりに顔をしかめっ面にさせていたら、ステラが聞いてきた。
「お母さんだったら、どうする?」
「う〜ん……難しいね。……でも、ペトラには伝えるかな。」
そして、続けた。
「…利用できるものは利用する。」