進撃のリヴァイ

□第8話 涙、飛び立つ。
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それから二人は、おでこを触れ合い。
それから、何度も何度も何度も。
啄むような、キスを繰り返す。

そして、リヴァイもそうだった。
彼女の唇を何度も、自分のそれを這わせ、
やがて口の中に舌を絡めて深く深く、思いを伝えるように。


「……ンッ…」

「……ッ…」

白い息が漏れて、両方の顔が離れた。

言葉が無かった。
直接。本能に従った結果だった。


リヴァイはジッ…。と、彼女を見る。
まだ、吹っ切れた様子はないが、気持ちに素直になれたのか。


「オルオにお礼しないと。」

「……必要書類に記入する気になったか?」

「なるか!!」


頭を小突かれるが、リヴァイは優しい手付きだった。彼女は不器用に笑って、
彼に再度伝える。リヴァイが安心するように伝えた。


「…傍にいますから。」

「あぁ…」

「リヴァイさん?」


彼女は澄んだ緑の瞳を向けて、自分が映っていた。リヴァイにはそれが欲しかった。
それが、目の前に立っていた。

少しだけ吹っ切れたのか、
ステラは以前よりも明るい表情に変った。


その瞬間に赤い線がリヴァイの目に近づき、
ステラが叫ぶ。


「リヴァイさん!!」

パァンッ


リヴァイが彼女を庇い、二人は地面に横に転がった。突然の銃声にリヴァイは目つきを変える。咄嗟に身を起こしナイフを出す。
正面から大男が歌いながら、歩いてくる。


「…よぉ〜リヴァイ。久しぶりだなぁ。………おぃおぃ…おぃおい……クソ野郎ぉ。見せつけてくれんじゃねぇの。」

「ケニィッッ…!!」


ステラはただ黙って、周囲を把握するので、精一杯だった。彼女はリヴァイが今までにない表情を浮かべるのを見て、血の気が引いた。

ケニー・アッカーマン。
リヴァイの伯父に当たり、行方不明になっていた。目の前にその彼がいた。


帽子を被った大男で190cmはあるだろうか。コートを羽織っている。それは血で薄汚れていた。

彼女は起き上がり、ただしゃがむしかできなかったが、
スタンガンをポケットに忍ばせていたので、それを探す。


リヴァイはナイフを構え、
睨みつけた。ジャケットにはいつも銃も携帯している。


「…悪趣味だな。…見てわからねぇのか。」

「……久しぶりに挨拶に来てやったんだぜぇ?……しっかしなぁ…お前ぇ……こんなおちびちゃんが好みかよ。」


ケニーはステラを見て、まじまじと見つめる。彼は何をしにきたのだろうか。
帽子を振り回し、彼はリヴァイに声をかけた。


「お前…覚えてんだろ。」

「何の話だ。」

「とぼけんなよ…そのおちびちゃんは見覚えがあるぜ。……」


何の話?と、ステラはしかめっ面になる。
リヴァイがケニー目掛けて、銃を、撃つ。
ケニーは軽々と交わす。

そうして、話を続ける。

「……忠告しにきてやったんだよ。………巨人の力は蘇えりつつあるぜ。」

「あ?」


巨人?…と聞いてステラは、首をかしげる。
リヴァイはわなわなと額に血管が浮き上がり本気で怒り出す。

ケニーに問いかけるが、彼は闇に消えていく。


「…答えろ!!」

「…また、会おうぜぇ。……おちびちゃんまた会おうなぁ。」


スッ…と影が消えていく。
リヴァイの取り乱す様子に、ステラはただならぬ気配を感じる取る。


(…………巨人の力…………なんのこと?)

リヴァイは地面を殴る。
びくっとした彼女は黙って、様子を見るしかできない。

彼は動揺した。聞きたくもない名前を。

(ふざけるな………二度と聞きたくもねぇ。)

だが、自分の並外れた力が徐々に戻り始めていることに気がついていた。恐れていたことが、現実になるつつある。

エレンが狙われているのか。
様々なことが、わからない。

リヴァイは黙って立っているステラに気がついて、振り向いた。よろりと立ち上がり、
彼は苦虫を潰した表情を浮かべる。


「………無事かッ…」

「……私は、大丈夫です。それより、リヴァイさん大丈夫ですか?顔色が悪いですよ。」

「元々だ。……ステラ。…この事は他には話すな。…学校も俺が迎えにいく。…一人で行動するな。」

「わ、わかりました。」


ただ事じゃない。と、彼女は悟る。
疑問に思うことを聞いてみたが、答えてはくれないと感じていた。


「巨人ってなんの話ですか?」

「…時期が来たら話す。………」


彼の体が震えているように思えて、
彼女は黙って取り敢えず、右手を掴んで
伝えておいた。


「…解りました。………また教えてください。…一人で背負わないで下さいよ。」


振り向いて、重ねてしまう。
あの頃の「彼女」に、だが、今ここにいる
この娘は全く覚えていない。
巻き込みたくなかった。
だが、もう、巻き込んだ。

リヴァイは悔やんだ。だが、彼女は情けない表情で笑う。

「こ、怖いんですけど…わ、私も一緒に考えさせて下さい!」

「…間抜け。」


それに安堵して、変わっていない事に救われる。リヴァイは周囲を警戒しながら、車内に戻ることにした。

ケニーの気配はない。
恐らく彼も記憶がある。
質が悪かった。敵に自分がいる。


何かが動き始めている。
夜陰の、枯れ木が動いている。
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