進撃のリヴァイ

□第9話 青の焰
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俺には分からなかった。

自分の力を信じても、
信用に足る仲間を信じても。

結果は誰にもわからない。
 
だから、まぁ、せいぜい後悔のない方を選べ。



兵士の自分が時より蘇る。
自由の翼を背負っていたあの兵団服を思い出す。もう、着用することはない。

するつもりもない。
一人の男として、生きていきたい。

だが、それを邪魔する輩が出てきた。


ケニー…母の兄だった。
生まれ変わっても、何かとお尋ね者なのかよ。と、リヴァイは舌打ちをする。

彼自身も闇の世界では、そこそこ名前が知られていたようだったが、とうの昔に断ち切った。


兵士だった自分が、声をかけてきた。

「随分な面だな。…クソでも出ねぇのか。」

うるせぇな、同じ面と声で話かけるな。
気持ち悪い。
自由の翼のジャケットを来た彼は、続けた。


「この世界のお前は、随分と恵まれてるじゃねぇか。」

だから、何だ。

「まぁ、聞け。…ケニーが動き始めたぞ。……ヤツの事だ。手始めに、お前の動きを観察し、お前の一番大事なヤツの首をかき切るだろうな。」


リヴァイは自分にナイフを向ける。
聞いてみたが、彼は変わらず続ける。

「死にてぇのか。」

「落ち着け………ヤツを潰す方法を教えてやる。」


リヴァイは、兵士の自分の胸ぐらを掴んだ。
彼はこう伝えた。

「…今のお前には、仲間がいる。」

「ぁあ?…答えになってねぇ。……」


兵士だった、自分から全ての戦いが終わり
アッカーマンの力を失った自分が、車椅子姿のまま静かに現れて伝えてきた。


「……お前は…何を選ぶ。…血の繋がりか?
それともお前自身の目的か?」


決まってるだろうが。
クソでも答えられる。

今のリヴァイは呟いた。
そうすると、片目のリヴァイが静かに笑う。


「なら、いい。…よろしく頼む。」


そう言って静かに消えていく。
彼は目を開けて、それが夢だったことに気がついていた。

吐息を漏らす。

「……ッ」


静かな部屋。
殺風景なこの部屋に、少しだけ。
色が添えられる。
彼女との海で撮った写真。
壁に貼ってみた。

あれから、ケニーの動きはないが
不穏な時間が漂う。

彼女と交際を続けることは、危険に巻き込むと承知していた。

それを言われると思ってステラは、
あえて言ってきたときは驚いた。


「…危ないから別れるとか言ったら、そんな勝手な事…絶対許しませんよ。」


彼女は以前よりも、はっきり伝えてくるようになってきた。リヴァイは嬉しかった。
それで心が和らぐ。

「……」


会いたいと思った。
毎日顔を会わせてるのに、抱きしめたいと。兵士の頃より、今の彼は愛されることを知り、感情は以前よりも比べられない程に
満たされていた。


だが。
それを奪うものには容赦しない。
たとえ血の繋がった相手だとしても。 


ラル家にも危害が及ぶかもしれないと、
リヴァイは先に先手を彼女に伝えてみることにした。


ラインを開く。
「新居を見せる。予定を開けろ。」


明け方の5時。
以前より眠れるようになっている。
兵士時代のリヴァイは不眠症気味だった。

眠ることがめんどくさかったのか、
執務室の椅子の上で寝落ちしたり、夜通し掃除をしたり、睡眠不足を舐めていた所がある。

エルヴィンからも何度も指摘されていただろうが、改善する気もなかった。

ある出来事以降は。
考えを改めた。

それはまた別の話。



明けた空の下。
自由の翼株式会社の地下室。
そこには、リヴァイを始めたエルヴィンやミケとナナバ、梅飴を舐めているハンジ。
モブリットの面子が揃っていた。


皆、一様に表情が硬い。
地下室には大きな声モニターに
ケニーと、金髪の眼鏡の髭面の男が
映し出されていた。

リヴァイはそれを見て、腕組みをし一人の舌打ちをする。
エルヴィンはモニターを指さして、
大きな声で皆に伝える。

彼は白シャツに黒いパンツ姿。
凛々しい表情は変わらない。


「ケニー・アッカーマンとジーク・イェーガー。この2名が活動を活発化させている。……目的は恐らく。巨人の再興だろう。………現代において、あれが蘇ればこの世界は滅亡する。厄介なことに、この世界でもお尋ね者に変わりない。」

「…俺達も変わらんがな。…他のクソ共に渡れば、この世界ごと地ならしされるだろうな。」


リヴァイは唯一あの光景を体験した一人だ。
口を出さずにはいられない。
ハンジもまた、黄土色のシャツにゆったりしたスカートをはいて、真顔で呟いた。

「冗談じゃないよ。」

そして、梅干しを食べてから
声を押し殺して話す。
モブリットはせっせとゲロ袋をつくり、
ハンジに差し出している。
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