進撃のリヴァイ
□第13話 ただ貴方を想う
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ペトラは白い窓のない部屋に拉致されたまま、項垂れて座り込んでいた。
簡素な部屋で、トイレと布団とお風呂場は用意されているものの、テレビはなく時計もない。
どれぐらいたったか分からなかった。
ペトラの隣には高校生のマルコも困ったように、胡座をかいて座っていた。
彼はスマートウォッチを隠していて、ひそかに情報を集めていた。だが、驚きのニュースが、流れる。
それをペトラに見せるべきか悩んだ。
マルコはエレンの同級生で、ステラとも顔見知りだ。
ペトラとは会ったことがなかったが、
顔立ちからして、姉であると真っ先に分かる。
「マンションで銃撃…29歳の男性会社員が撃たれる。犯人は反政府組織と思われる。」
マルコはそれをみてリヴァイではないかと、不安になる。
彼はふと、泣きつかれた表情のペトラを見て声をかけた。
「あの、大丈夫ですか?」
「…ありがとう。貴方も。」
「僕は大丈夫です。……あの、ステラ先輩のお姉さんですよね?」
ペトラはブラウンの明るい瞳を瞬きして頷いた。後輩達と交流があった妹を思い出して、柔らかく微笑む。
すると、思春期のマルコは美人だなと赤くなって顔を背ける。
真面目な性格の彼は紳士的で、ペトラとは一定の距離を保って座っている。
「ええ、そうよ。」
「…似てらっしゃいますね。」
「ふふ、ありがとう。…よく似てるって言われる。」
笑うとめちゃくちゃ美人だな。と、マルコは照れてしまう。非常時だが、世間話をして紛らわせるしかできない。
あれから、1日経っていて
食事は出されていて眠る環境もあるが、二人はあまり眠れていなかった。
ペトラはマルコと初対面だからか、言えない相手に対する気持ちを打ち明けてしまう。
「妹とね。好きな人が同じだったの。」
突然の告白にマルコは黒い瞳を丸くする。
打ち明けたいのかなと、優しい彼は黙ってい聞いてくれる。
彼氏にしたらきっと優しいだろう。
「…ズルいのよ。…妹に手を出さないでって、高校生の時に釘をさしちゃって。」
「…」
「その人は初めから、私なんて見てなかった。ずっと妹が好きだったの。見てて分かってた。でも、諦めたくなかった。」
ペトラは思わず照れ笑いして謝る。
誠実な顔でマルコは聞いてくれた。
「ごめんね。痛いよね自分語り。」
「大丈夫ですよ。打ち明けてください。」
「ありがとう。…優しいね。」
場が和むが、ペトラは彼に近づいて誰か来る」と、スマートウォッチを外して服の中に隠した。見張りが歩いてきたのだ。
彼女は目付きを鋭くして、黙って俯いたふりをした。マルコはペトラに迫られているような姿になり、真っ赤になってしまう。
足音が遠ざかった後、マルコは恥ずかしそうに言った。
「あ、あの?」
「あ。ご、ごめんね!」
「いえ…その、」
寧ろありがとうございます。だったと言いたかったがジャンみたいにおもわれたくなくて、黙っていた。
(…すごく、いい匂いがしたなんて言えない。)
すると、いきなり扉が開いてケニーが陽気に挨拶をしてきた。
ペトラとマルコは並んで警戒する。
彼はにやにやしながら、ペトラに話しかける。
「よぉ、お姉ちゃん…元気そうだな。」
「…」
「そんな面すんなよ。……いい知らせだぜ。」
彼女は訝しげにケニーを睨む。
彼の口調が変わった。すこし憤りにもにた声色も含まれていることにマルコは気づいた。
マルコはとても聡明だ。
「リヴァイが反政府組織に撃たれたってよ。」
「!?」
彼女は目を見開いて、呆然とした。
そして、ケニーは続ける。
「あのドチビ、ヘマしやがってよ。……俺の筋書きが変わっちまったじゃねぇかよ。」
「リヴァイさんは?!リヴァイさんはどうなったのよ!!」
ペトラはケニーに詰め寄り、胸ぐらをつかんで必死に尋ねる。気が強いと彼は笑ってしまう。女性に手を上げる趣味はない彼は、
黙って静かに告げた。
「運ばれた。」
「…」
ペトラは真っ青になり、その場にしゃがみ込む、マルコはケニーに淡々と尋ねる。
彼は詳しい事は言わない。
だが、マルコの胸ぐらを掴んで投げつける。
彼は尻もちをついた。
「容態はどうなんですか?」
「知らねぇっつってんだろ。」
ドサッ音がした時に、ケニーの部下の金髪の女性が歩いてきた。
「隊長…お呼びがかかりました。…開始するそうです。」
「おぉ、わかった。相変わらず悪趣味な真似しやがるよ。…お前等の番が来ねぇように祈っときな。」
なんのことだ?と、ペトラとマルコは怪訝な表情を浮かべる。