短編小説

□花の咲く頃に
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春になると一斉に花が咲く。

とある晴れた日、私と兵長は小高い丘の上で座って町をぼんやり眺めていた。

兵長は今日休みで、私に会いに来てくれた。

心地のよい風が私達の髪をゆらした。

青い空がどこまでも広がっている。




「お前と別れてしまったのも、このくらいの季節だったな」兵長が言った。

"そうだね。"

「ちょうど一年くらい前だったか。なんで別れちまったんだか」

"あの時は仕方なかったよ。誰にも防げなかった"

「あれからずっとお前のことばかり考えてた」

"…ありがとう"

「あの時、離れ離れになっちまう前に、お前に気持ちを伝えておけばよかった」

"兵長の気持ちは伝わってるから大丈夫だよ"

「お前は兵士になるには優しすぎた」

"いつも私のこと優しいって言ってくれるね"

「俺は今までもこれからもお前のことが忘れられない。好きだ」

"私も…大好きだよ"


「もし、この世から巨人がいなくなったら、俺も兵士やめて結婚して所帯を持つことが出来るかもしれねえな」

"兵長の子供は絶対可愛いと思う"

「俺とお前の子供は絶対可愛いだろうな」
兵長は腕組みをして、一人でうなづいてる

"気が早い…じゃなくて、想像しすぎだよ"










「もう、お前と子供を持つ夢も、叶わないんだな…」





















私は兵長に触れようとしたけどできなかった。

身体が透けている。

死んだ私は兵長に触れることができない。



小高い丘の上には、戦死した私のお墓がある。

私の声も、もうリヴァイに届かない。


「なんで死んじまうんだ。だから兵士になるなって言ったんだ」

"リヴァイのそばにいたかったんだもの"

「会いたくても、もう二度と会えねえじゃねえか」

"ごめんなさい"

「ばかやろう」









fin
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