long (izo)
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目が覚めると引き締まった胸筋が目の前に入ってきた
見上げると薄明かりの中、綺麗なイゾウの寝顔
もぞもぞと動いたからか身体に巻きついていた腕に隙間がなくなるくらい引き寄せられる
「イゾウ?起きてるの?」
小さく囁くくらいの声で尋ねたけど返事はなくて
静かに上下している胸元にまだ眠っているのかと理解した
もう人を好きにならないって決めていたはずなのに
この腕の中は心地よくて離れがたい
こんな照れ臭いけど暖かい気持ちになったのはいつ以来だろう
もっとくっついていたくて
イゾウの温もりを感じたくて私からも抱きついて。。。
あれ?
さっきよりあったかくない
イゾウはいつも私より体温高くてあったかかったはず
ピタッっとくっついていた身体を少しずらして身体を起こすと自分の腕が視界の隅に入った
え?
なにこれ?
透けてる。。。?
やだ、このタイミングで元に戻るの??
なんで?どうして??
寝起きの頭ではもはや考えが追いつかない。イゾウを揺り起こそうと胸元に手を置いたけどもう肘くらいまで透明になってる
イゾウ!起きてよイゾウ!!
すでに声になってないようで、必死に声を張るけどイゾウは目覚める様子が全くない
せっかく自分の気持ちを認識したばかりなのにこれってなに??
『。。。イゾ。。もっとそばにいたかった。』
もうきっと全身消えかけている
この声も想いも届かない
伝えたい気持ちと焦りが入り混じり年甲斐もなく涙が溢れてきた
長いまつ毛が影を落としている綺麗な寝顔をせめて記憶に焼き付けようとじっと見つめて形のいい唇に自分の唇を押し当てた。
「イゾウ、ありがとう。また会えるといいね」
今度こそ自分の声が耳にはっきりと届いた。届いたけど。
目の前にいたはずのイゾウは消えていて、さっきまでいたイゾウの部屋でもなくて。
私は裸で住み慣れた自分の家のベッドの上に座っていた。
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