long (Marco)
□捌
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あれから一週間。マルコはドレスローザまで全て観終わっていた。
平日、私が仕事している間はずっとPCでネットサーフィン。英文の論文や記事を探しているっぽい。もちろん、異世界関連の話ばかり。
この一週間でちょっと変わったことといえば、あの夜からマルコがちょっと優しくなったこと。先日風邪をひいた時は看病もしてくれた。
「ただいまー」
「わんっ」
「おかえりよぃ。病み上がりなんだから無理するんじゃねえよぃ。」
「もう大丈夫だよ?夕飯すぐ用意するね。」
「じゃあ俺はふうの散歩しとくよぃ。ふう行くよぃ。」
「わんっっ」
なんか言葉数が増えたというか。
壁が無くなったというか。そんな感じ。
「今日の晩飯はなんだよぃ?」
「餃子にしようかなと。明日休みだからおつまみ何点か作って晩酌どう?」
「いいねぃ。楽しみにしてるよぃ。」
頭をポンポンと撫でてから犬の散歩に向かうマルコ。
こんなキャラだったか?と思うくらいだけど、不思議と嫌じゃない。
むしろ。
「マルコがいなくなったら私、どうなっちゃうのかな。」
誰もいない部屋で一人、ぽつんと呟いた。
***
「なんか進展した?」
これはここ数日の日課になっている。ネットでなにか分かったことがないかの確認。何も見つからなければいいのに。ずっとここにいればいいのにと、黒い気持ちには蓋をする。
「これといってはないよぃ。」
「そっかぁ。」
「ヤミヤミの実。サッチとエース。そして親父の危機。なんとしても阻止してぇ。」
うん。とハイボールを飲みながらうなずく。皆に泣いて欲しくない。あんなエースも見たくない。何より今はマルコの涙を見たくない。と、思ってしまう。
「名無しさんが最初に俺たちを救いたいって言ったろぃ?正直、こいつ何を言ってんだって思ってたんだよぃ。でも。。。よい」
無言で次に綴られるマルコの言葉を待つ。
「あんな事になるなんて思ってもみなかった。サンジってやつが好きって言いながらも、親父の俺たちの未来を変えたいって言ってくれて嬉しかったよぃ。」
「変えたいよ。今も。マルコの哀しむ顔は見たくない。」
目の前でマルコの眠たそうな目が見開かれる。
嘘じゃないけど、これはちょっと一言多かったか。
「ありがとよぃ。戻って必ず変えてみせるよぃ。」
ふわっと笑ったマルコを見て。
あぁ。私この人のこと好きなんだなぁって漠然と思った。
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