long (Marco)

□T
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マルコの夢を見た。
あれから一週間が過ぎ
元に戻った日常。


マルコがいたなんて本当に夢だったんじゃないかとも思う。


空色の腰布と一冊の本。
それが夢ではなかったことの証。




【天満月。
潮の満ち引きの激しき時。
扉は光と共に開かれかれけり。
また、その扉現るるは水面に月の道が現れし時。
また光り無く真の暗闇の時に限りけり。
扉を潜るもの。時空をも越えるべし。

時空を超えた民と出会えし者、逆も然り。
否、贄を献上した者のみ扉開かりけり。

一、体躯のいづれが一つ
二、記憶
三、いづれか

贄を朱雀に献上つかまつれば、神子となりけり。時空を超えること易し。

さりとて再開する事、いと難し。
お互いの玉をもつてすれば易し。】



身体のどこかか記憶。
どっちも怖い。


「それでも逢いたいってこの歳になって笑えるわ。」


誰に言う訳でもなく一人呟く。


「お散歩行くか。ふう。」

「わんっ」


ちょっと遠回りをして桜並木を歩く。
空には満月。いつの間にかマルコと出会って一月が過ぎたのか、といない誰かを思ってしまう。


「一緒にお花見したかったなぁ。。。」


一人呟いた後に、桜並木の影に人影を見つけた。
黒い影。街頭があるにもかかわらず、何もかもが黒い。あり得ない。


「人の子よ。贄を差し出す覚悟はあるか?」


空気が変わる気がした。
全ての音が遮られ、痛いくらいの無音。


「もう一度聞く。我に贄を差し出すか?否か答えよ。」



心臓の音が煩い。
これはきっと身体が記憶かどちらか出せと言う事は明白で。
否、と答えることもできるのに声が出ない。



なんとなくスカーフの様に首に巻いてきた空色のマルコの腰布に手を当てがう。



どちらか出せばマルコに会える?
そう思ったら勝手に言葉を紡いでいた。



「身体でも記憶でもなんでも差し出すわ!だからマルコに会わせて!!」




黒い影がすごいスピードで身体に当たる。腹部に激痛が走ると目を開けていられないほどの光に覆われた。



誰もいない桜並木。
赤い血痕と一匹の犬がそこに居た。





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