SS

□白檀
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ふわり。
どこか落ち着き懐かしい薫り。



視線をゆるりと動かすと


「お姫ぃさん。何してんだい?」


いつも綺麗なイゾウ隊長が背後にいた。



「イゾウ隊長、いつも気になってる事があるんですけど、イゾウ隊長の薫りはお香かなにかです??」


以前から気になっていた事を問うと


「お前さんよくわかったねぇ。」

「私の居た世界にもお香があったので。なんか懐かしい薫りだなっていつも思ってたんです。」


「お姫ぃさんの居た世界はワノ国に本当ににてるんだな。俺は部屋で白檀を焚いてんだ。だからその移り香だろうよ。」


上品な薫り。
海の上にいても、なんか懐かしい情景が浮かんでくる様で。


イゾウ隊長から視線をそらし、海の上を眺めた。

珍しく凪いだ、湖面の様な海。
穏やかな水面はまるでイゾウ隊長の様だと想う。



「今日は凪いでるな。海はまるで人の世の様だと思わねえか?」



珍しく饒舌なイゾウ隊長を見上げて、言の葉の真意を求めるように静かに見つめた。


「穏やかな日もありゃ、荒れ狂うくらい苦しい時もある。それでも、愛しくて求めてしまう。」

「そんな海を求める。。。なんかイゾウ隊長ぽいですね。」

「そうか?そんなこたぁねぇ。俺はもう一つしか求めてねえからな。」


唐突に背後から抱きこまれ、耳元でそうっとささやく。


「海も好きだし追い続けることはやめやしねぇが。俺は今、お姫ぃさんしか求めてねぇさね。」



ちゅっと頬にリップ音を態とらしくたててから、逞しい腕が離れていった。


どこからか白檀の薫り。
私に移った残香がふわぁっと風と共に舞った気がした。



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