long (izo)

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思っていた以上に捻挫は酷かったらしく、しばらく動かすなと船医に釘を刺され大人しくイゾウの部屋で書類のお手伝いをしていた。


もともと翻訳の仕事をしていたので英文だったこっちの読み書きは問題なし。
また、OL時代は事務だったので書類関係はむしろこんなに大雑把でもいいのか?と思うくらいだった。



「イゾウ隊長〜終わりました!」



窓を開けて煙管をふかしているイゾウは外を見ながらおう、っと短く答えた。
何か考え事かな?


コンコンっと外に灰を落として



「お姫ぃさんは本当に事務能力高ぇな。マルコに知れたら持ってかれるなぁ。」


白々しくイゾウは言うけれど


「知られても困らない程度の書類だからじゃない?重要書類だったらもっと時間かかるよ。」


トントンっと紙を整えて文机の上に置く。捻挫してる足に正座は結構キツイ。



「クックッ言うねぇ。まあ、そもそもうちの隊でそこまで重要な書類回ってこねぇけどな。」

「そうなの?」

「マルコのとこに全部集まるからな。あいつが一番大変で重要なデータが集まる。」

「そっかぁ。マルコってやっぱすごいねぇ。でもそんな事私に教えていいの?」



イゾウが腰を上げてこちらへ歩いてきて私の前で膝をついた。


「別に俺はもう警戒してねえよ。お姫ぃさんひとりじゃ親父の首どころか隊員の首一つ取れやしねぇ。だろ?」


まっすぐにこちらを見て話すイゾウの目を私もそのまま見つめて言葉を返した。


「首を取るもなにも。私の愛読書の中の憧れの白ひげ海賊団なんだよ?一緒に生活出来るだけで嬉しいし」


膝をついていたイゾウがそのまま胡座をかいて腰を下ろす。
その前に正座のまま向きを変えて向かい合えるよう私も反転した。


「本に載ってなかった隊員のみんなもめっちゃいい人だし。本当、私に力があれはみんなを守りたいって心から思うよ。」



それは一週間過ごした私の答え。
まだちょっとの時間だけしか共有してないけどみんないい人で。

これから起こるかも知れない事件は私が防ぎたいって心から思う。いつまでいれるかわからないけれど。


「名無しさんが馬鹿正直なのはこの数日で理解したが。。。お前さん俺たちにまだ隠してる事ねえか?」

「なんでそう思ったの?」



これは言えない。未来を変えることだから言えないし言ったらダメだと直感でそう感じた。


「言葉に少し含みがあんだよ。なんか言えねぇ訳でもあんのか?」


うーん。どう切り返そう。



コンコン

「イゾウいるー?入っていいー?」


ハルタの声がしてその場の流れが変わってくれた。



「いるよ。なんだい?」

「宴の準備出来たよーって名無しさんここにいたんだ!ルルを助けたんだって??」



ルルって言うのは多分あのナースの事だ。こくんと頷くと。


「見た目弱っちいのにやるねー!その話も聞きたいからさ早くおいでよ!」



返事をしながら立ち上がろうとして足から激痛が走った。


「痛っったーーーっ」

「えーー!どうしたの名無しさん??」

「はぁ。。お姫ぃさんはどこまで抜けてんだい。怪我した足に体重かけたら痛いに決まってんだろ。」


イゾウは文句を言いながらも立ち上がらず座り込んだ私の手を引いて起こし


「ハルタ、先に行っとけ。今のお姫ぃさんの歩みは亀より遅せぇ。」

「怪我したの?イゾウ何やってんのさ。側にいたんでしょ??」

「俺は無傷で守ったさ。こいつ後片付けで一人でこけたんだよ」



ありえないーっとハルタはケラケラ笑いながらみんなに伝えてくると言って先に甲板へと向かった。


「ごめん。そう見られちゃうのか。」

「いや気にするこたぁねぇ。ハルタのやつが今頃言いふらしてくれてらぁ。急ぐ必要もねえからゆっくり行くぞ?」



なんか恒例の様になっているイゾウの大きくて少しゴツゴツした手を取った。
長い指が私の手を引きゆっくりと廊下を進んだ。



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