long (Marco)2
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カランカラン。
扉を開けると外装通りちょっと古めかしくて古民家のような佇まいのお店でちょっとテンションが上がった。
店内はトマトソースのいい香りが漂っている。
窓辺の席へと通されてメニューをもらう。だいぶ文字は読めるようになってきたけど、最終確認はサッチに聞いてトマトとバジルのパスタをオーダーした。
「んー!美味しい!」
「名無しさんちゃんはいつも美味そうに食うよなぁ。俺もいつもその顔見たくて頑張っちゃうし。」
「食い意地はってるって言いたい?」
「んなこた言ってねえの。それが可愛くて仕方ないっての。」
改めてそんな事を言われてしまうと年甲斐もなく照れてしまう。照れ隠しで何気なく窓の外をみて食べている手が止まってしまった。
その様子にすぐに気付いたサッチも私の見ている窓辺へと視線を動かした。
通りの向かい側の路地の影で2人の男女がキスをしていたのだ。
「あの野郎。名無しさんちゃんの気も知らねえで。。」
なんか言い訳をして来るのかと思いきや明らかに怒っているサッチを見て私は怒る気が失せてしまった。
「マルコ、海賊だもんね。誰とキスしてても一々怒ってられないって。サッチ怒ってくれてありがとう。」
再びお皿に視線を戻してパスタを頬張る。美味しいね、とは言ったけど本当はなんの味もしなくなっていた。
あれからサッチとたわいもない話をしていた気がするけど正直なんの話をしたのか覚えていなかった。私の中でいろんなモヤモヤが溢れてきて、気を使ってくれているサッチに八つ当たりしちゃいそうで、無性に一人になりたくなった。
「サッチ、私ついでに自分の買い物して帰るから先に戻っててくれないかな?」
「ん?俺っちも付き合うよ。何が欲しいの?」
「いや、下着だからサッチと一緒はちょっと。。。」
さっきたまたま目についたランジェリーショップを指差すと、ああとサッチは納得してくれた。
「じゃ俺待ってるから行っておいでよ。」
「もう夕方だし、夕飯の仕込みもあるでしょ?この道まっすぐ行けばモビーだから1人で大丈夫だよ。」
渋々サッチからお許しが出たけど最後まで気を付けろだとか暗くなる前に帰ってこいとか私は子どもかって言うくらい口すっぱく言われて、本当優しいんだなって思った。
1人になりたくて気晴らしにランジェリーショップに入ったけど特に欲しいものはなくて、ある程度時間が経ってから店の外に出た。
サッチを心配させたくないけど、もしモビーに戻ってもマルコがいなかったらとか、逆にマルコに会ったらどんな顔したらいいんだろうとか余計なことばかり考えてしまう。
「よくよく考えると好きだって言われたけど付き合うとかそういう話した事ないや。。。」
私よりサラさんの方が若くて綺麗だから、やっぱりサラさんがいいとか。船にいる時は私で、この島に来た時はサラさんみたいに一夫多妻で行くとか。
海賊の男女事情ならあり得ない話ではないし。。。
私はそれでもマルコが好きでいられるのかな。
マルコが他の人を好きでいても許せるのかな。
「お?こんなところに女がいるぜ。」
ふとその声に顔を上げると見覚えのない街並み。私はどうやら怪しい路地に迷い込んだみたい。
「姉ちゃん1人か。俺らと一緒に楽しいことしにいかねぇか?」
いつのまにか数人の男に取り囲まれてる。
「行きません!もう帰るところですから。」
「そう言うなって。一晩くらいいいじゃねえか。」
伸びてくる手に手首を掴まれ強引に抱き寄せられる。男の手が、体温が気持ち悪い。離して欲しくて声を上げて逃げようとしたら首の後ろに激痛が走った。
「おっと。今白ひげの船が来てるんだ。大人しくしてもらわねえとなぁ。」
マルコ。。。と呼んだ声は出ていたのか出ていなかったのかわからないまま意識が落ちていった。
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