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□目的
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「早いものだな。」
どんよりとした空の下、海へ出る手筈を整えたミアに、ミホークは声をかけた。
「いや、1か月といえど世界最強に修行を受けたことに深く感謝している…。
ありがとうミホーク」
普通ではあり得ないような成長速度でミホークの修行を終えたミア。
身体能力だけでなく、外見も随分と大人びた。
まるで我が子を一人育て上げて見送るかのような気持ちでミホークはミアを見ていた。
「お前は無鉄砲に突っ込む癖がある。
剣に迷いがないのは良いが、いつか身を滅ぼし兼ねん。」
「わかってるよ、聞き飽きたよそれは…。」
はぁ、とため息をつき、おせっかいを焼く師匠に笑みを浮かべる。
「私の目的は、失われた記憶を取り戻すこと。
そして、必ずここに戻ってくる。ミホーク、それでもいい?」
「フン。お前は俺をなんだと思っている?
行ってこい。そして必ず戻ってこい。」
少し口元を緩めて旅立つ弟子の頭をなでる。
こんな感情は初めてで、ミホークはハッとして手を引っ込める。
「なにさ、うれしかったのに…。
相変わらずクールな人だなあ。」
「早く行け…」
拗ねたようにそっぽを向くと、ミホークは帽子を深くかぶりなおした。
「あぁ、じゃあ…」
ミアは先の見えない海へ船を出した。
棺船によくにた、小さな小舟だ。
ミホークはその姿を見えなくなるまで見送った。