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□男と女
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『なあミア、良かったら俺たちの船に乗っていかないか?』


シャンクスはそっと手を差し伸べる。


ただ、その手をとることはどうしてもできなかった。



「シャンクス...気持ちだけ...」

静かに眠っていると思ったところにポツリと寝言を呟く。

かつてライバルだった男の名を2度も呼び、心の奥で何かがチリと火花を散らす。

「あの男が、お前に一体何をしたというのか...」

ミホークは暇つぶしにナミから借りた航海日誌を読みながら時間を潰していた。


船は島を発見し、大きな図書館があるということでチョッパーは大喜びで調べ物に出かけていった。

万が一のことがあるのと、立場上船から出るわけにはいかないミホークは船に残ることになった。

ほかに、ゾロ、サンジ、ロビンが船番で残ることになった。



「おい、鷹の目。邪魔するぞ」

「ロロノアか」

「お前なんだろ?あの刀与えたってのは?ミア本人がそう言ってた」

「そうだ。俺が与えた。
あの娘に最も必要な物を。」

「なんなんだよあの刀は!
普通じゃねえのは一目見て分かった。
聞けばこの世に存在するかどうかも定かじゃねぇとかいうわけわかんねぇ代物なんだろーが!」

ゾロはミホークを怒鳴り散らした。


「もしもその刀のせいでこいつが危険な目にあってると分かったら...
もしもそうだとしたら....
俺が、お前をぶった斬る。」


ゾロはギロリと睨みつける。

ミホークは顔色ひとつ変えずゾロを威圧した。


「この娘の運命は、あの刀と共にあってこそだ。
貴様には分からんだろうが、危険な目に遭えば俺が手を貸す。ただそれだけのことだ」



己の力に対する絶対の自信。

そしてその力は間違いなく桁外れで手も足も出ない。

ゾロが立てる誓いよりもその言葉は凛々しく聞こえ、間違いないものだと確信が持てた。


「俺は....そいつを守り切ってやるって誓ったんだ!同じ失敗は二度としねぇ。」

「何を憤っている」


ゾロは言われてハッとした。

ミホークが船に来てからというものずっとイライラしっぱなしだ。

「すまねぇなぁ鷹の目さんよ、このクソマリモ、多分嫉妬だ」


サンジがタバコの煙をフウッと吐いた


「...なっ!てめぇクソコック!んなわけあるか!」

「なんだぁ?自覚がねえのかよ馬鹿野郎が!」


「俺が...そんな風に誰かをなんて...あるわけねぇだろ」


ちょっと赤面したゾロをみてサンジもハァとため息をつく。


「あーあやめだやめ!
今のてめぇ見ててもつまらねえ」

「んだとこの野郎やんのかぁ!?」


パタン。


騒々しく出て行った2人を横目に、航海日誌をテーブルに置く。


すると



「賑やかだね。あの2人いつもあんな感じだけど、慣れた?」


「起きていたか」


ミアは目をこすりながら起き上がる。


「寝てばっかりいると頭痛くなっちゃってさ」


「体を起こすのは最低限にしておけ」


ミアの体を気遣うと、ミホークは聞いてみたかったことを口にする。


「赤髪のことだが...」


「ん?シャンクス?
あぁ...夢にもよく出てくるよ。でも、全然思い出せない。
仲が良かったし良くしてもらったのはなんとなく覚えてるけどね。
...故郷のことは、思い出したくないかも」


訳ありであると悟ってはいるものの、消えた記憶の中でも大きな存在がシャンクスだ。

となると...


「少し出かける」


スッと立ち上がると、シャンクスは身支度を始める。


「出かけるって何処に?」

「お前は良く休んでいろ。体に触る」


それだけいうと静かに医務室を出て行ってしまった。


(なんというか、やっぱ掴めない人だな)


ミアは1人になった医務室でクスッと笑った。
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