腐向け小説

□運命の番
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【弟者視点】

俺は、運命の番を信じている。


神様は、人間に[男性/女性]のほかにもう一つ性を与えた。「αアルファ/βベータ/Ωオメガ」である。

オメガ性の人間は発情期になると性欲が向上して身体に力が入らなくなり、更にはフェロモンを発して社会的に有能なアルファ性の人間を誘引・興奮させてしまう体質を持っている。これが定期的にまたは不定期に一週間程続くため社会での扱いが悪い。「番」や「抑制剤」と言った回避手段もあるが完全ではない。
また、男性同士での性交・結婚・出産が普通に行われ、出産はαとΩの男性同士でできる。

アルファとオメガの間にのみ発生する特別な繋がりを「番(つがい)」と呼ぶ。
フリーのオメガはフェロモンを発してフリーのアルファを誘い、番になったオメガは以後フェロモンを発さなくなる。番になる基準は運命的なものであったり、性行為の際にアルファがオメガのフェロモン分泌腺があるうなじや喉元を噛むことでフェロモンが変質し、番になったことが周囲にも判別できるようになる。
なお、ベータとオメガで繁殖は出来るが、番関係にはならないと言われる。

運命の番とは、好き嫌い関係なく魂がひかれあう存在。世界では夢物語として知られている。なので、運命の番のことは未だによくわかっていない。ただ、運命の番に会うと、ところかまわず発情してしまう。そういわれている。


俺は、子供の頃Ωと診断された。兄は、αだった。母さんたちは相談して、俺たちを離して暮らすことにした。かすかに覚えているのは、兄の後ろ姿に泣きついている俺の姿。

この言い方だと、兄と生き別れたみたいになっているが、大人になった今、兄に会うのを許されている。一人暮らしを始め、俺たち兄弟+一人で活動を行っている。
緑色の髪でとても優しいβの、おついちさん。
深い青色の目と髪が特徴的なαの、兄者。
赤い髪と目をしているΩの俺、弟者。


俺は、運命の番を信じていたが兄者は信じていなかった。おついちさんは・・・よくわからない。最近、兄者に好きな人ができたらしい。Ωで、一目惚れというやつだ。その相手について今日は相談ごとのような話をする日だ。


ピンポーン

兄者がきた。俺は玄関に向かってドアを開ける。

「兄者、いらっしゃい。」

「ああ、お邪魔します。」

「はーい。」

リビングに通すと兄者は椅子に座った。俺は、兄者にお茶をだした。兄者は嬉しそうにお茶を飲んでいる。

「それで、相談ってどうしたの?」

「何回も話しているのに、向こうは気づいてくれないんだ。どうすれば、気を引けるかわからない。」

「ああー、なるほどね。」

ドクンッと心臓が大きくなる。またきた。兄者にあうと発情期のような反応がでる。でも、薬はすでに持っていたから、兄者に気づかれる前に飲んだ。兄者も、そういう薬を飲んでいると言っていたから大丈夫だろう。俺はすぐに飲んで話に戻る。兄者は、特に気にしていないようで、俺がだしたお茶を飲んでいる。

「そうそう、弟者今度一緒に買い物いかないか?それで、俺の服を選んでくれ。」

「うん、いいけど。いつぐらいが空いてる?」

「明日と、来週の土日とかなら大丈夫。」

「俺も、明日は大丈夫だよ。明日にする?」

「そうしよう!」

兄者はうれしそうに納得している。それからすこしだけ話して兄者は帰って行った。兄者の家はここから、五分くらいのところにあるので、わりと近い。
ふと、リビングに兄者の忘れ物があった。兄者のお気に入りの時計だ。なぜはずしたのかは、わからないけれど。そっと、その時計を持ち上げて棚の上に置く。そういえば、一つ気になる事がある。兄者が訪れた時にどうしても反応してしまうことだ。
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