腐向け小説

□青の記憶喪失
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【弟者視点】

7月16日、俺たち兄弟は晴れて結ばれた。
おついちさんや、メロさん。色んな人から背中を、押しに押された結果だった。兄者からの告白は今でも忘れられない。
でも、兄者とは子供が出来ない。結婚ができない。それが、俺の不安をずっとあおっていた。

それから、いろいろあり行為をしたり、たまにけんかをしたり。俺たちは、確実に愛を深めていった。

付き合い始めてからちょうど二年目の今日。7月16日。兄者から、婚姻届けを渡された。そこには、すでに兄者の名前と承認としておついちさんとメロさんの名前が書かれている。

「兄者・・・。俺は・・・ごめん。」

俺はそこまでのプレッシャーに耐えられなかった。兄者は、すこしだけ悲しそうに笑うとドアを開けて出て行ってしまった。
ああ、俺の不安が兄者をあんな顔にしてしまった。どうしてあそこで覚悟が出来なかったんだ。その夜、兄者が帰ってくることはなかった。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

次の日、おついちさんからメールが来た。内容は、“兄者が事故にあった。今は寝ているけれど、○○病院にきて!”俺は、すぐに家を飛び出した。まさか、昨日事故にあっていたのか。兄者が、死んでしまう?

病院につくと、おついちさんが座っていた。その前には、手術中の文字が赤く光っている。

「おついちさん!」

「弟者君、兄者は今手術中だ。今は、祈る事しかできない。」

「そんな・・・俺のせいで・・!」

俺はその場で泣き崩れた。どうしてあのとき、兄者をとめなかったのだろう。もしかしたら、今が変わっていたかもしれない。おついちさんは、俺の背中を優しくなでてくれた。

「これ、兄者が持っていたの。すこし血がついてしまっているけれど・・。」

「・・・!!」

おついちさんの手の中には、あの時兄者に渡された婚姻届けだった。俺はそれを受け取ってみる。兄者のきれいな字が書いてある。ああ、どうして?俺は、自分を責める事しかできなかった。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

手術が終わった。先生は、「手術は無事成功しました。ただ、・・・・記憶障害が出る可能性があります。覚悟はしておいてください。」と話してくれた。
ああ、後悔の念が押し寄せてくる。
明日は?明後日は?今日は?いつまで俺のことを覚えててくれるの?兄者に「誰ですか?」なんて言われたくない。
兄者の部屋に行くと、あのきれいな顔がある。すこし、包帯で隠れてしまった青い髪が見える。ああ、そうか。これは俺への罰だ・・・。
兄者、どんな罰でもいいから、あの紙にだって名前を書くから、目を覚まして・・・!
おついちさんは、その様子をずっと後ろから見守るだけだ。ふと、おついちさんが俺の方をたたく。

「今日は、帰ろう。明日には、目を覚ますよ。大丈夫。」

「・・う、うん。」

俺はおついちさんに連れられて帰った。今日は、おついちさんの家に泊まることになった。ふと、ポケットに手を入れると婚姻届けが入っていた。
それから、俺とおついちさんとご飯を食べて寝た。こんな夜はいつぶりだろう。安心できない、そんな夜は・・・。
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