腐向け小説

□青の記憶喪失
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ああ、最後だったのにそれさえも許してくれないのか。いや、今のは俺が悪かった。そんなことは、分かってる。
でも、それでも、兄者が好きなんだ。

俺は、部屋に飛び込んだ。部屋に入ると、何もかもを気にせず泣くことができる。
おついちさんがいなくてよかった。
そうだ、何もかもなかったことにしよう。だって、俺たちは兄弟なのだから。

俺は、扉の前にうずくまって泣く。本当はなかったことにはしたくない。それじゃあ、兄者と一緒にいられない。俺は、兄者がいなくなることが一番嫌なのだ。

「っふ・・・あにっ・・じゃ・・。」

涙が止まらない。机の上には、頑張って書いた婚約届がおいてある。兄者にとってはどんなに頑張ったことなのか、それはわかっている。


【兄者視点】

あの時の弟者の顔をみると、胸が苦しくなる。でも、その感情が何かわからない。弟者のことを見ると、とても嬉しく感じる。どうしてあんなやつにこんな感情を持たなければならない。
イライラする。俺は、弟者の部屋の前に行った。中から弟者の泣き声だろうか、すすり泣く声が聞こえる。

「・あにっ・・じゃ・・」

俺の名前を呼ぶ。そんなことで俺はこんなにも、喜ぶのがイライラする。反射的に扉を開けていた。弟者は、涙を流しながらびっくりした顔でこちらを見ていた。泣くなよ、そんな顔で。


【弟者視点】

兄者が、俺の部屋に入ってきた。どうして?そんなに俺の声が聴きたくなかった?
謝るから、忘れていいから、今の俺を見ないで。だって、兄者は優しいから、きっと自分を責めてしまうから。

「あに・・じゃ・・っ!?」

兄者から急にキスをされた。どうして、俺のこと嫌いじゃないの?
兄者の顔は何かと葛藤しているような顔だった。
こんなキスは嫌だ。兄者は、きっとイライラしている。そんな兄者と一緒にいたくない。こんな泣いている俺自身も、見てほしくない。

「んっ・・・あにっ・・いやだっ・・!」

必死に叫ぶが兄者は、まったく聞こうともしない。それよりも、どんどんイライラが増しているような感じだがする。でも、嫌なんだ。それが、兄者だとしても。
嫌だと訴えていると、兄者は急に俺をベットに放り投げた。早く逃げなければと動くけれど、兄者につかまる。ベットから降りることができない。兄者は、俺の力の何倍も近い力で俺を押さえつけた。そんなに、俺のことがい嫌い?

「あにじゃ・・・いやだよっ・・いやっ」

俺のズボンを下ろす。それで察しがついた。兄者は、何も言わずに進めていく。こんなことをされても、本気で振り払えない。気づかないうちに涙を流していた。兄者は、まだ慣らしてもいない場所に、すでに固くなったものを入れてきた。

「いたっ!?・・・痛いよ・・いた、い・・」

兄者は気にすることなく、動く。何も感じない、痛いだけの作業。だんだん大きくなった兄者自身。中にはだしてほしくない。必死に抵抗した。すると、兄者が俺を殴った。恐怖だった。

「あにっ・・・中は・・中だけはっ」

その言葉もむなしく、欲は俺の中に吐き出された。兄者は、何も言わず部屋を出て行った。俺は、布団の中でうずくなる。お腹の中は、その思いとは裏腹に暖かい。目からたくさんの涙が流れてくる。今度は、兄者に聞かれない様に泣いた。

もう、どうすればいいか俺にはわからないよ。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

次の日、俺は朝早くに家を出た。向かった先は、兄者と初めて思いが通じ合ったところ。
まだ、日は上っていなく暗かった。でも、そんなところがよかった。俺にはもう、朝がこない。時が戻ってほしい。そうすれば、あの届を書くことが出来る。
やっぱり、忘れる事なんてできないよ、兄者。
すこしだけ赤くはれた、俺の頬をさすった。


【兄者視点】

朝起きて、我に返った俺は弟者の部屋に入った。昨日の謝罪をするために。弟者の部屋は、もぬけの殻だった。そっと中に入る。机の上には、婚姻届けがあった。俺と弟者の名前が書いてある。ところどころ、文字がかすれている。泣いて書いたのだろうか。
俺は、すぐに走り出した。その、婚姻届けを握りしめて。

思い出した。俺は、ずっとそばにいてくれた人に・・・。最初になんとなくで向かった先は、あの場所だった。俺と弟者が、初めて思いが通じ合ったところ。
日がだんだんと登り始めている。そこにつくと、赤い髪の俺が探していた男がそこにいた。

「弟者・・。」

弟者はこっちをみて、驚いていたがすこしだけ微笑んでこちらに来た。

「兄者、風邪ひくから先に帰りな。」

弟者は自分でまいていたマフラーを、俺の首にまいた。弟者は、俺の手に持っていたものを見て固まっていた。

「弟者、ごめん。ひどいことした。弟者の事、忘れてごめん。」

ぎゅっと弟者を抱きしめる。弟者は震えている。そのままじっとしていると、胸のあたりが濡れている。弟者は泣いていた。

「あにっじゃ・・・!」

俺は、そっと弟者を離すと自分で殴ってしまった頬を撫でた。弟者は、それが気持ちよかったのか頬を摺り寄せる。

「ごめんな、弟者。」

「いいよ、兄者。思い出してくれてありがとう。」

弟者は、うれしそうに笑っていう。朝日の出のオレンジ色が弟者の顔を明るく照らす。それが、きれいではかなげでどこかに行ってしまいそうだった。俺は、弟者の手をつかむ。弟者は、びっくりしていたがその手を優しくつつんだ。

「兄者・・愛してるよ。」

チュッとキスをされる。それが嬉しくて、ニコッと笑った。そんな笑顔をみて笑う弟者が愛おしい。

「俺も、愛してるよ。」

もう一度弟者を抱きしめる。弟者も腕を背に回して抱きしめる。

「弟者、俺と結婚してくれ。」

「・・・うん!」

これで二度目だ。ここで告白をするのは。
弟者は嬉しそうに笑っている。二人で手をつなぎながら、一緒に家に帰る。そこには、おついちさんがいた。びっくりした顔で見ていたが、俺と弟者が手を繋いでいることに気が付いて、嬉しそうに笑った。

「やっと、戻ったのね。というか、兄者。待たせすぎだよ。それに、殴ったよね?」

おついちさんにそう詰め寄られる。確かに、殴ったのは“俺”だが俺じゃない。
それに、あの時の気持ちは今ならわかる。弟者に、恋をしていたのだ。でも、昔の俺しか見ていない。だから、イライラしていた。今の“俺”を見てほしくて。
やっぱり、お前はすごいよ。記憶をなくしてもなお、お前に惚れるんだ。俺は、お前にぞっこんなんだよ。

「兄者?」

「なんでもないよ。」

それから、部屋に入っていろいろ話した。記憶がなかった俺の話でもちきりだったけれども。

弟者、愛してるよ。俺はお前がいなけりゃ何もできない。

“俺も、同じだよ。兄者がいなかったら、何もできない。”

俺の心の声を返すように弟者は笑った。


END


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