腐向け小説
□赤い花
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【弟者視点】
花咲病というものを知っているだろうか。この世の中、この奇病を知っている人はほとんどいないだろう。俺も、少し前までそうだった。その奇病を知ったのは、俺がこの病気にかかってしまったからだ。
ある日、朝起きると片目が開かなかった。というか、見えなかった。兄者に聞くと、目から花が咲いていたらしい。
調べてわかったことは、これが花咲病という病であること。治療法は一つ、愛している人に愛してもらうこと。愛している人といえど、好きな人でもいいらしい。珍しいから、発病例も少ないし回復した例ももっと少ない。
もしかしたらと、憶測で書かれているものをみるとだいたいが、愛をこじらせると発病するらしい。
俺の花は、きれいな赤色だった。この花は、俺の体力や養分を吸って咲いている。だから、だんだん養分を取られていき寝たきりになるらしい。
そういう病院に行ってみたが、進行を遅らせる薬だけが精いっぱいだと言われた。
そう、諦めるしかないのだ。
最近、片目が見えないのにも慣れてきた。兄者とおついちさんも、心配してくれている。ただ、それが兄者とおついちさんを縛ってしまっている事にもなっている。それが、俺にはとても重かった。
それに、俺の好きな人は特にいない。というよりは、絶対に叶わない。だって、実の兄だから。
「おい・・もう昼だぞ?」
「あ・・・うん。」
最近早く寝ても、お昼ぐらいまで寝るようになった。お昼ぐらいになると兄者や、おついちさんが起こしてくれる。それでも、眠いのは変わらない。全然寝た気にならなのだ。そろそろ、覚悟はしておくようにと医者から言われた。まあ、それでも俺はいい。逆に残してしまう兄者とおついちさんの方が、心配だ。
「弟者くん、おはよう。」
「おはよう、おついちさん。」
階段を下りた先、リビングにおついちさんが座っていた。挨拶をすると、おついちさんは笑った。兄者は、俺の後ろに立っている。目が片方見えなくなって視界も狭くなった。だから、急に後ろから出てこられるとびっくりしてしまう。だから、最初の方は怖かったりしたが、今では慣れている。
「弟者、何か食べるか?」
「うーん・・・パンでいいや。」
「弟者くん最近、ほとんど何も食べてないじゃない。」
「まあね・・。」
心配してくれるのはありがたいが、何も食べる気にならないのだからしょうがない。お腹がすくよりも、眠いのだ。まあ、食べるだけましだと思おう。
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ごはんを食べ終わった俺は、今兄者の隣でテレビを見ている。兄者の隣は安心する。だから、とても眠くなってしまうのだ。
兄者のことが好きだ。でも、兄者は女性を好きになる。そんなことはわかっている。赤い花はそれを表しているのか、たまに花弁が落ちる。
たまに、色も変わるみたいだけれどこの花の色は一回も変わらず赤色だ。
俺の目の影響もあるのだろうか。
「弟者、眠いのか?」
「あ・・うん・・。」
「寝てろ。俺が隣にいてやる。」
「あ・・・ありがとう、兄者。」
兄者は俺の頭を撫でてくれた。俺は、そのまま寝てしまった。