腐向け小説
□喧嘩
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【おついち視点】
家にお邪魔すると兄者と弟者くんが喧嘩していた。理由はよくわからないが取っ組み合いの掴み合い。しかも暴言がそこかしこを飛び回っている。
「兄者!弟者!ストップ!」
まったく俺の話を聞こうとしない。俺よりも背が高く力もある兄弟を、押さえつけようなどと出来るはずもない。
「二人とも落ち着け!!」
俺はまったく話を聞こうとしない二人を置いて風呂場に向かう。バケツを取り出して水をこれでもかと入れる。それを持ってきて兄者と弟者にかける。二人はそれにびっくりして動きをとめた。
「やめろって言ってるでしょうが!!」
俺の顔は今、真っ赤だと思う。でも、そんなこと考えている暇なんてない。この人たちをどうにかしなければ。
二人はこちらをみてポカーンとしている。服や髪は俺がかけた水でビショビショになっている。
「おっつん・・・。」
「おついちさん。」
「君たちいい加減にしなさいよ!」
「だって、兄者が!」
「お前だろ、弟者!」
話も聞かずにまた喧嘩を始める二人。この二人、実は付き合っている。だからこそこういう大きな喧嘩はなかったものの。今日は、何かで爆発した感じだ。
「また水を被りたいの!?」
俺はまた大声で怒鳴る。二人は行動はやめたものの、暴言をすごい勢いでお互いに浴びせている。
「兄者のバカ!」
「っは、俺はお前なんか嫌いだね!」
兄者の言葉に弟者はついに泣き出してしまった。というより今の言葉は兄者が悪い。兄者はあまり本音を言わないタイプだから強い口調になって、それがエスカレートしてしまったのだろう。普段はそんなこと気にしない弟者だが、今回はそんなことも考えられないらしい。涙を流しながら家を出て行ってしまった。
兄者はそのままで固まっている。どうやらこちらも弟者の泣き顔に結構来たらしい。
「兄者、分かってる?自分が何言ったか。」
「・・・おっつんもあいつの味方かよ。あいつが悪いんだ。」
兄者は苦虫をつぶしたような顔をして部屋に行ってしまった。しかもバンッとでかい音を立ててドアを閉めた。
「ったく、ほんとにこの兄弟は・・・。」
俺はすぐに鞄を持って弟者の後を追った。どこに行ったか見当もつかないし、スマホも持ってないだろうからどこを探そうと迷っていたところ、近くの公園に座っている弟者くんを見つけた。
あまり遠くに行ってなくてよかった。