ゆうなぁ短編

□優越感も恋
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私はもぎさんが好き!


まぁ、正しくは男装したもぎさん!茂木宮くんが好きなんだけど………最近、何故かノーマルタイプの茂木さんにもキュンキュンとしてしまうことが多くなってきた。




(おんちゃ〜ん)

「あれ……、もぎさん?!」



ラジオ番組の収録中。なんだが気配を感じた私はガラス越しにサブコンを見ると、そこには何故か白い箱を持った茂木さんが「おんちゃん」と口パクで私のことを見つめていた。



「急にどうしたの!?」



CDをかけたタイミンでブースから抜け出し、茂木さんの方に駆け寄ると、茂木さんは




「差し入れと忘れ物を届けにまいりました〜」




と手を額にビシッと構え、猫可愛がりな目つきでおちゃらけて笑った。ほかの後輩の前だと絶対しない表情だ。


私だけが知る、茂木さんの顔。それだけでなんだが満たされて、笑みを堪えきれずに私は下唇を軽く噛み締めた。




「あ〜!優越感なんだ!」




いつしか、まこちゃんに言われた言葉を思い出す。
確かに、多分家族以外で、私のことをここまで優位に置いてくれる人なんて茂木さんぐらいしかいない。でも、だからなのかな?

近頃の茂木さんが日に日にかっこよく見えてきて、髪も切ったせいなのか、美形な顔立ちが余計に目立って見える。




「何ボーっとしてんの?ほら、はやく食べな」

「あっ、うん!いっただきまーす」



差し入れとして茂木さんは丁寧にもスタッフさんの分まで、ケーキを買ってきてくれた。おかげさまで今みんなでおやつ休憩を頂いているのだけど、私の分をお皿に装って、はいってフォークとともに渡してくる茂木さんを見て


私ダメ人間にされるのでは、と本能的に感じた。


「食べないの?」

「ううん、ありがと」



茂木さんからケーキを受け取り、生クリームの甘さにうっとりとする。



「あー、あんた口のまわりが真っ白だよ?」



うわの空で食べていたからか、久々の甘味にがっつき過ぎたからか、まるでハムスターのように頬張る私に、茂木さん仕方ないなぁーと言いたげな顔でティッシュを渡してくれた。



「ぁ、ありがとぉ…」



いつも一緒にいるのに、時々茂木さんの行動にはハッとするときがある。惚れるというのもなんだが違くて、私だけにする顔だったり行動に気恥しさを感じる。




「あ、そうだ!!みおんちゃん!これ渡すんだった!」


ケーキを食べながらふと何か思い出したのか、茂木さんはバックの中身をガサゴソとあさり、中から小さな白色のモバイルバッテリーを取り出してきた。


「充、電器……?」



いかにも誇らしげな茂木さんに対し、私はわけも分からず茂木さんからそれを渡された。



「ほら、朝あんたボイメくれたじゃん?」

「え?、…あーー!!!!!」



ここで初めて私は朝、LINEで茂木さんに充電器忘れた!持ってきてー!と半分冗談のボイメを送っていたことを思い出した。



「え、それで……?イケメンかよ……」

「まぁ、暇人だからな!」




何故か勝ち誇ったような顔をする茂木さん。それがなんともおかしくて



「確かに、それもそうだね!」



と茶化すと



「こら!そこは遠慮するところだろー?」



と嬉しそうに私のことを自分の懐に詰め込もうとする。ふざけながらも衣服から溢れ出る香水の匂いに、私は思わずほっとしていた。


あぁー、私なんだ。この人の一番近くにいるのは私なんだと深く実感するこの瞬間が一番好きだったりする。



「よし!じゃそろそろ行くね!」




帰り際までふざけ倒したあと、茂木さんは振り返らずに颯爽と帰っていった。渡された白のモバイルバッテリーを握りしめ、茂木さんはきっと今の私の顔がどれほど赤いのか知らないのだろう。




「あー、やばいなぁ…、これは完全に惚れ直したパターンだ……」



と誰にも聞こえないほどの小声で、私は茂木さんの背中に向けそう呟いた。
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