ゆうなぁ短編

□葛藤
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11月のよく晴れた日。私はめずらしくもゆいりちゃんからお出かけの約束を持ちかけられていた。いつもは私から誘っても断るし、ドタキャンに定評があるゆいりーが



「お買い物に付き合ってくれない?」




なんて言うのだから!なんだが昔に戻ったみたいで、すごく舞い上がってしまった。



「ゆいりー、今日はなにを買うの?」



ウキウキの気持ちを抑えられなく、私は今日のための周辺の店をバッチリと押さえてきた!

と言っても、どうやら彩希にはお目当ての店が既にあったみたいで、さっきから地図を見ては辺りをグルグルと回っている。



人が往来する入り組んだ道。人気がだんだんと少なくなるにつれて、彩希はそっと口をつくんだ。





「んっとね、もうすぐなぁちゃんの誕生日だからさ。サプライズ……してあげたくて…………」






ほんのり赤く染る頬に、恥ずかしそうに俯く彩希を見て、私は全てを察した。





(あー、そっか……)






別に忘れていたわけじゃない。

なんなら、誘われた時点で少し気づいてすらいた。でも知らないふりをした。


妬ましさと羨ましさで胸が焼けてしまいそうになるから……


それでもやっぱり、少しでも舞い上がった自分がなんだがアホみたいで、私は自嘲気味に自分自身を鼻で笑った。




「あっ、あった!!」




そんな私の気持ちも知らずに、無邪気にもお目当ての店を見つけて嬉しそうに看板を指す彩希ちゃん。


私は今、どんな表情をしているのだろう。胸がチクチクと痛くて、言葉も噎せ返るほどに色んな感情が溢れかえっているのがわかる。



それでも、嬉しそうにお店に駆け寄る彩希ちゃんを見ていると、何も言えなくなるし




(幸せになれよ……)




といつかの劇のセリフがふと頭をよぎった。
でも今の私には、あんな颯爽にあのセリフを言うことなんて到底できない。




「どうしたの?」




うわの空な私を見て、彩希は振り返るなり走って戻ってきてくれた。そして私の手を引いては



「……いこ?」



なんて……変なところで勘がいいのは昔から変わらない。




「なんでもないよ!早くお店に行こ!」




困った顔して頭を傾げる彩希に、私は茶化すように引っ張ってお店へと入っていった。







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※あとがき


ゆう「なぁちゃん?どうかしたの?」

なぁ「この日、休みだったんですね……」


インスタ:篠崎彩奈
(彩希ちゃんとイチャイチャデートなう!)


ゆう「あっ!いや、それは……ちがくて」

なぁ「その日、私誘ったんですけど……」

ゆう「待ってごめんて!でも違うんだよ!ってなぁちゃん!」



それをあやなんが遠くでニヤニヤとしながら見ていたことはまた別の話である。
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