中編

□第三章
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 二人の逢瀬はずっと続いた。
 逢瀬は邵可邸でのみ。朝廷では二人の関係は王と官吏だ。それ以上でもそれ以下でもない。
 だが高官たちの間では、二人の婚姻をすでに決定事項と見ている者までいた。
 劉輝が積極的に進めなくても、秀麗の官吏と后妃の兼任の話は進む。
 静蘭は劉輝がどう考えているのか知りたかった。
「――劉輝」
 秀麗に会いに来た劉輝を静蘭が呼び止めると、劉輝は気まずそうな表情で振り返った。無理もない。静蘭は二人の話を、どちらの口からも聞いていない。
「兄上……」
 少しの間見つめ合い、劉輝はポツリと謝る。
「……ごめんなさい」
「何が?」
「何がって……秀麗とのことです。兄上ならもう気づいているのでしょう」
「ああ。旦那様もな」
 すると劉輝は申し訳なさそうにうなだれた。
「だが、なぜ謝る? おまえとお嬢様は、愛し合っているだけなのに」
「もっと早く、私か秀麗の口から報告するべきでした」
「そんなこと」
「でも、兄上は怒った顔をされています」
 言われて初めて静蘭は自分の表情がこわばっていることに気づいた。
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