短編

□花を愛づ
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「姫さん、今から花見にでも行かね?」
 公休日、秀麗が自宅で本を読んでいると、燕青がひょっこりと顔を出した。秀麗はきょとんとする。
「今から? お花見って、燕青、もう春も終わるわよ?」
 しかも燕青の口からお花見なんて風流な言葉が出るなんて。
 すると燕青は苦笑した。
「姫さん、俺だってちゃんと考えてるって」
「本当? でもこの時期のお花見なんて、何の花? 菜の花も桜も季節は終わってしまったし……あ、蓮華かしら? 蓮華もきれいだけど、でももう咲いてないわよね?」
 ぶつぶつと呟く秀麗に、燕青は再度苦笑した。
「行ったらわかるって。な?」
 秀麗は素直にうなずいた。
「わかったわ。お弁当の用意するわね」
「いや、いいよ」
「そうなの? せっかくなのに」
 残念だと呟く秀麗に、燕青は微笑した。ただ微笑んだだけの表情が優しくて、秀麗はどきりとする。
「……どうしたの、燕青?」
 秀麗が言うと、燕青は少しだけ見開いて、さらに笑った。
「準備はいいか?」
「ええ」
「じゃ、行こっか」
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