贈物

□秋空
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※秀麗と絳攸結婚後の捏造話


「……ゆ…さま……絳…攸様……!」
 心地よい温もりの中、絳攸は微睡んでいた。
 どこからか懐かしい声が聞こえるが、それさえ心地よくて絳攸は微笑み、また眠りについた。



 数刻後――…
 ふと頬に硬いものが触れて、絳攸は目を覚ました。
「あ、ごめんなさい絳攸様。起こしてしまいました?」
 申し訳なさそうな声に、絳攸は仰天するほど驚いた。
(こっこれは……秀麗の声……!?)
 驚きのあまり飛び起き、
 ごっちん……!!
「〜〜…!!」
 ふたり揃って額を押さえ、無言で痛みを堪えた。
「絳攸様、そんなに急に起きなくても……」
 秀麗は絳攸の顔を覗きこんでいたらしい。すると、絳攸の頬に触れたあの硬いものは、秀麗の手か。
「すまん……」
 と謝ったとき、絳攸は自分に衣が一枚かかっているのに気づいた。
「これ……」
 ああ、と秀麗は笑う。
「まだ暑いとはいえ、夕暮れは冷えてきますからね。寝ていると風邪ひいちゃいますから」
「すまないな」
「いいえ」
 ふたりは微笑み合う。――と、絳攸はもっともなことを呟いた。
「俺……寝てたのか?」
「ええ。めずらしく外で本を読むとおっしゃって……」
 本は日に当たると変色してしまうので、絳攸は極力陽の下で本を読まない。
 だが今日は。
「空――いい色だな」
 絳攸は空を見上げる。限りない空の、限りなく優しい色に、柔らかな笑みがこぼれた。
 秀麗の肩に触れ、すっと引き寄せる。秀麗は無言で絳攸の肩に頭を乗せた。
「あの日も――こんな空だったな」
「はい」
 あの日。ふたりが結ばれた日。
 白い衣に身を包んだ秀麗の手をとり、絳攸は言ったのだ。
『俺は春が好きだが、空は秋の空が一番好きだ。誰かと支えあって、どこまでも行ける気がする。俺はその「誰か」がおまえであったことが嬉しい』
 秀麗も嬉しかった。
 それからずっと蜜月。
 新しい命の到来に恵まれることはないけれど、ふたりはずっと一緒なのだ。ずっと。

***あとがき***
遅〜くなって申し訳ございません(土下座)!!!
聖子様リクエスト。
絳攸×秀麗のほのぼのとリクエストでした。
ほんとにほんとに遅くなってすみません…まだいらっしゃるかしら…
気に入ってくだされば幸いです。
*この作品は聖子様のみお持ち帰りいただけます。

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