頂物
□側にいて…
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−−…あなたに会いたくて会いたくて仕方なかった。
だから、お願い−−…
側に居て…
その日も御史台で残業だった秀麗は、カチコチに凝った肩と首を解しつつ、通用門へと歩いていた。
本来なら今日は定時の予定だったのだが、いきなり長官に呼び出され、急遽仕事が追加されたのだ。
「……本当なら、今日は鳳珠様とお会い出来る筈だったんだけど、仕事だもん、仕方ないわ…」
ふう、と溜息をついて、秀麗は夜空を見上げた。
幾千もの星が瞬いている夜空を見ていると、申し訳ないのと寂しい気持ちが込み上げてきた。
鳳珠は、秀麗の謝罪の文を読んで、怒るどころか励ましの返事を返してくれた。頑張りなさい、といつも温かく見守ってくれる恋人に、今すぐ会いたい衝動に駆られた。
……しかし既に深夜、こんな時間に訪問するなど非常識だし、鳳珠に迷惑は掛けたくない…
秀麗は鳳珠に貰った文をぎゅっと握りしめ、涙が零れないように目をつむり、ざわめく心を落ち着けようと深呼吸した。
−−−そうしないと、寂しいという気持ちに負けそうだった。