頂物
□大好きだから…
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−−ねぇ…あなたの側にずっと居たいと言ったら
やっぱり罰が当たるかしら…?
大好きだから…
秀麗は、とある人物を探して茶州州城を歩き回っていた。
今日は絶対に草案に目を通して欲しいからお願いね、って言っておいたのに、もうっ!
「…燕青?燕青〜?」
姫州牧が大声で州尹を探していれば、嫌でも目立つ。直ぐに州官が秀麗に近寄り、燕青を見た、ととある場所を教えてくれた。
秀麗は丁寧に礼を言い、教えられた場所へと急ぐ。
「もうっ!悠舜さんにお見せする前にお願いね、って言ったのに!」
プリプリ怒りつつ庭院へと向かう。そこは、春の陽射しを燦々と浴びて、色とりどりの花が咲き乱れていた。
「−−…綺麗…!」
日々の忙しさにすっかり忘れていた−−こうやって自然と接することが、なによりも癒しになるということを。
「…少しだけなら、いいわよね…?」
秀麗はそう呟き、咲き乱れる花をゆっくりと愛でる。その表情は歳相応の笑顔を取り戻していた。
そうやって花を堪能していたその時、秀麗は探し人を見付けた。燕青らしいというか、土が付くのも構わずに、地べたに寝転がっている。
(…やっと見付けた!)
先程迄のカリカリした気持ちは消え、花の香りに癒された、穏やかな気持ちで燕青へと近寄っていく。
「−−燕せ−」
声を掛けようとしたが、珍しく燕青が眠っていることに気付き、足を止め、声を飲み込む。