頂物

□未来を一緒に
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この手は離さない


「−−絳攸様!」

回廊でウロウロしている師を見付けた秀麗は、直ぐさま絳攸に駆け寄った。
きっとまた迷ったのだろう、正に天は二物を与えずを地でいく人である。
しかし、そんな迷子っぷりが、秀麗は好きだった。目的地まで、例えほんの僅かな時間であっても、絳攸と居られるのだから…



しかし秀麗が近付くと、絳攸は珍しくうろたえた。何時もならば心底安堵の表情を浮かべるのに、どうしたのだろうか…

「…絳攸様…?」
「しゅ、秀麗!奇遇だなぁ!」
「はぁ…」

声が裏返っている、何とも凄まじいうろたえっぷりだ。もしかして、近付いてはいけない理由でもあったのだろうか?
秀麗は腹を括り、探りを入れることにした。

「絳攸様は、どちらに向かわれるのですか?」
「お、俺か?……まぁ、その…なんだ…」

何時になく歯切れの悪い言い方に、逆に心配になる。やはり、自分は来てはいけなかったのでは……

「…そうですか……もしかして、どなたかと待ち合わせをされていたのですか?」

やや気落ちして聞く秀麗に、絳攸は焦り出した。

「いや、違う!待ち合わせなどしていない!−−−正直に言う、俺はお前を探していたんだ」

思わぬ言葉に秀麗は驚いた。いつも探される人が、あろうことか、私を探してくれていた−−!?

俄かに心が浮足立ちそうになるが、ぐっと力を込め、平静を装う。糠喜びはしたくなかった。

「…何故私を探されていたのか、お聞きしても…?」
「−−そ、それは…!!」

一気に顔が真っ赤に染まる絳攸を見て、秀麗は思わず可愛らしいと思ってしまった。
こんな純粋なところも好きだな、とぼんやり思いつつ、絳攸の言葉を待つ。


「−−…その…伝えたかったんだ、誰もいないところで…」
「…えっ?」

目を見張る秀麗に、赤く染まった顔で絳攸は伝えた。

「俺は、お前が好きだ。弟子だからとかじゃない、純粋に愛しいと思っている………返事はいらない!じゃあなっ!」

言い切ると脱兎の如く逃げ出そうとする絳攸の手を、秀麗は反射的に掴んでしまった。

「しゅ、秀麗っ!離せ−−」
「−−離したくありません」
「だから離せって−−はい!?」


−−振り向くと、そこには自分と同じように赤く染まった秀麗が居る。手をしっかりと掴んで……


(…まさか、まさか…)

ゴクリ、と喉が鳴る。自分は男と思われていないだろうから、諦めていたのに……

「…秀麗、好きだ」

秀麗の手に力が篭る。

「…俺の、妻になってくれるか…?その、近い将来でいいから…」

また、返事の代わりに力が篭る。

今度こそ絳攸は破顔し、秀麗を引き寄せた。

「…狡いです、言い逃げだなんて…!」
「す、済まない!怖くなったんだ」
「−−…私だって、ずっとお慕いしてましたよ?師としてでなく…」


だから、二度とこの手を離しません。




未来を一緒に

それが、私の希望…







*********
親愛なるそめこさんへ。
勝手に李姫を贈りつけます(殴)
しかもかなりのヘタレっぷり…祝う気あるのかアンタ…orz

と、ともかく!
一周年、おめでとうございますvV

2008.5.9 悠羽



=御礼=
悠羽様、素敵小説をありがとうございました!
悠羽様のヘタレ絳攸を我が家に飾れて光栄です。
ヘタレながらも心温まる物語に、胸がきゅんとしました。
かなり私事の一周年に、こうして贈物をいただけて、嬉しい限りです。いつも仲良くしていただいてありがとうございます!
これからもよろしくお願いしますね!
本当にありがとうございました!


悠羽様。
サイト:そらのした(閉鎖されました)

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