コラボ
□二人だけの約束
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−−ねぇ、名前を呼んで?
−−そして……
『愛してる』と言って…?
(…あ、また髪を縛ってる…)
フラフラと邸の回廊を歩いていると、遠くに目当ての人物を発見する−−が、今日も自分の好みを無視し、髪を結わえているのを見て、朔洵の瞳は曇った。
「なんで縛っちゃうんだろう?」
欄干にもたれ掛かりつつ考える。
理由其の一。暑いから。
確かに夏だし暑いかもしれない。
理由其の二。癖だから。
昔から結わえるから、それが当たり前になっているのかな。
理由其の三。"蕾"が挿せないから。
うーん、一番有り得そう…。
朔洵はそこまで考え、不機嫌な顔付きになる。
「私よりも、大事なの?」
相思相愛だと思っているけれど、でも彼女は官吏であって、王に忠誠を誓っている。
それは分かる。
でも……
「…これくらいの我が儘、きいてくれてもいいじゃないか」
ただの嫉妬だと分かっている。
そこまで彼女に忠誠という名の愛を示された王を、少なからず憎く思う。
そのまま欄干に肘をつき、手の上に頭をコテンと乗せる。
結わえていない長い癖毛が、時折吹く夏の風に煽られる。
−−−ふわり
−−−ふわ…さらり
無造作に流れる髪を一房掬う。
「…気持ちいいのに…」
子供っぽいけれど、秀麗と同じ感覚を分かち合いたい、そう思ったのだ。
そして何より……
「似合うのになぁ」
朔洵は髪が風に吹かれるままに、暫く欄干に佇んでいた。