短編

□ちんけな饅頭@
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 賑やかなお茶のひとときを、府庫の外から覗き見る二つの影があった。先にいた一人は、後から来た一人に気づいて苦笑する。
「これはこれは……弟思いでいらっしゃる」
「いえ。あれを目にかけてくださって、ありがとうございます。差し入れまでしてくださって」
「ちんけな饅頭と言われてしまいましたが」
「…………申し訳ありません。わがままに育ってしまって」
 邵可は目を伏せ、そして微笑む。
「ですが、あの子、食べていたでしょう。本当は嬉しいのですよ。ひねくれているからあんなこと言ってばかりですが」
「そうだとよいのですが」
 魯尚書も珍しく頬を緩め、府庫を見やった。
「大変変わった進士たちですが、きっと近いうちに大官になりますよ。楽しみですね」
「大官になるのはいいのですが、悠舜殿や鳳珠殿に絶対迷惑をかけるに違いないので、その心配を」
「いいと思います。それが同期というものです。支えあうことを知っているほど、大きくなれる。今上陛下の御世でも、次の陛下の御世でも、なくてはならない存在になるでしょう」
「他ならぬあなたにそう言っていただけたなら、大分心配も減りました。黎深をよろしくお願いします。どんどんしごいてやってください」
「確かに、承りました」
 愛情のこもった願いに、魯尚書は頭を下げ、二人は別れた。彼の言葉はそのまま現実となる。
 月下、暁前の語らいであった。

***あとがき***
ちんけな饅頭シリーズ、第1弾。温かいお話がいいですね。次は誰にしよう……?
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