短編

□星々の想い
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「こんにちは」
 折よくやってきたのは、楸瑛と絳攸だ。二人は持ってきた手土産を秀麗に渡した。
「こんにちは! ああ、ありがとうございます! なんか申し訳ないです……」
「気にするな。夕食を食べさせてもらう礼だからな」
 絳攸が言って、秀麗はうなずいた。
 二人が将軍や侍郎から退いてから、特に楸瑛の生活は厳しいものになっている。
 秀麗は手土産はいいと言ったのだが、二人とも欠かさず持ってきてくれる。
 その中身が多少変わっても。

「おや、いいところに来ましたね、二人とも。これは主上からの変テコな贈り物です。楸瑛、中に運ぶぞ」
 きれいな顔を最大限利用して完璧な笑顔を作った静蘭は、恐れる楸瑛に強制した。
「よく秀麗殿にばれないもんだ…」
「楸瑛、何か言ったか?」
「いえ、なんでもナイです……」
(ひとりで運べないなら素直にそう言ったらいいのに)
 とは思うものの、口にできるはずがない。おとなしく静蘭の言葉に従って楸瑛が静蘭と竹を邸の中に運び込むと、絳攸が声を上げた。
「なんだこれは?」
「なでしょうね?」
 秀麗ものぞきこんで首をかしげる。
 二人が見ているのは大きな葛籠だった。今まで竹に隠されて見えていなかったらしい。
 絳攸は秀麗と目線を交わして葛籠を開ける。と……
「なんだってあの坊ちゃんはいつもいつもこんなブキミなものを私に送りつけるわけ!? なんか私悪いことした!? こんなに大量の藁人形、どうしろっていうのよ――――!!」
 叫んだ秀麗に、葛籠の中身を知らない静蘭と楸瑛もすぐに事情を察した。
「ね、静蘭。君の弟、なんとかならないのかい?」
「今は近いのは私よりもお前だろう。いいじゃないか。愛情表現くらい変でも」
 まぁ、楸瑛にとっても劉輝は弟のような存在だ。ヘンテコな愛情表現もかわいいものだ。
 しかし当の秀麗はかわいいものなんて言ってられない。
 深々と溜め息をついた秀麗に、絳攸は手紙を差し出した。
「よく見ろ、秀麗。文が入っているぞ」
「あら、ほんとですね」
 ありがとうございます、と言った秀麗は、手紙を開いて目を見開いた。
 読み進めるにつれて、その表情も優しげになる。
「……意外とまともなことが書いてありますよ」
 そう言って絳攸に文を渡すと、絳攸も少し見開いて苦笑した。
「藁人形はともかくとして、ちゃんとした贈り物だな」
 やってきた静蘭と楸瑛も驚いたように苦笑する。
「決まりですね。では今日は七夕の集いとしますか」
 静蘭が言って、それは決まった。
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