頂物
□側にいて…
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無理矢理心を落ち着けた秀麗は目を開き、家路に就く為通用門へと急いだ。
−−胸にはお守り代わりに文を抱いたまま……
(−−空なんて見なきゃ良かった。そしたら寂しいなんて思わずに済んだのに……)
仕事だから仕方ない、それは分かっている。もし鳳珠が仕事で会えないと言ってきたら、秀麗はちゃんと納得する。それと同じことなのに、今回は自分の仕事が恨めしかった。
早く帰って寝よう、秀麗はそう思い、俯き加減で足を早める。
−−そんな時、サラリと流れる絹髪が目に入った秀麗は、驚いて顔をあげた。
宮城の壁に寄り掛かり、先程の自分と同じように空を見上げるその人こそ、秀麗が会いたくて堪らなかった人……
「−−…鳳珠様…!」
秀麗は鳳珠に向かって駆け出した。こんな、夢のようなことがあるのだろうか?でも今は、夢でも何でも良いから会えて嬉しかった。そして抱きしめて欲しかった。
「…秀麗、お疲れだったな」
鳳珠は柔らかい微笑みを浮かべて秀麗を抱き留めるが、いつもと様子が違う秀麗に少し心配になった。
「どうした、何かあったのか?」
秀麗は胸に顔を寄せたまま、首を振る。
「……違います。鳳珠様に会いたくて仕方なかったんです」