頂物

□側にいて…
2ページ/5ページ

無理矢理心を落ち着けた秀麗は目を開き、家路に就く為通用門へと急いだ。
−−胸にはお守り代わりに文を抱いたまま……


(−−空なんて見なきゃ良かった。そしたら寂しいなんて思わずに済んだのに……)

仕事だから仕方ない、それは分かっている。もし鳳珠が仕事で会えないと言ってきたら、秀麗はちゃんと納得する。それと同じことなのに、今回は自分の仕事が恨めしかった。

早く帰って寝よう、秀麗はそう思い、俯き加減で足を早める。


−−そんな時、サラリと流れる絹髪が目に入った秀麗は、驚いて顔をあげた。

宮城の壁に寄り掛かり、先程の自分と同じように空を見上げるその人こそ、秀麗が会いたくて堪らなかった人……

「−−…鳳珠様…!」

秀麗は鳳珠に向かって駆け出した。こんな、夢のようなことがあるのだろうか?でも今は、夢でも何でも良いから会えて嬉しかった。そして抱きしめて欲しかった。


「…秀麗、お疲れだったな」

鳳珠は柔らかい微笑みを浮かべて秀麗を抱き留めるが、いつもと様子が違う秀麗に少し心配になった。

「どうした、何かあったのか?」

秀麗は胸に顔を寄せたまま、首を振る。

「……違います。鳳珠様に会いたくて仕方なかったんです」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ