頂物
□大好きだから…
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−−綺麗。
そう思った。自然が創ったような豪胆な人だが、花に囲まれて眠る燕青は、それがとても似合っていた。
「−−狡いわよ、燕青…うっかり気持ちがバレそうじゃない…」
小さく呟いたはずなのにパチッと目を覚まし、秀麗を見付けてニカッと笑った燕青に、秀麗は激しく慌てた。
「−−!」
「ひ〜めさん、何がバレるって?」
しまった、燕青という人間を忘れていた自分が馬鹿だった。彼は文官であると同時に優れた武官なのだ、きっと自分の気配で起きていたに違いないのに…彼の穏やかな寝顔にほだされ、ついうっかり口が滑ってしまった。
しかし時既に遅し。いつの間にか燕青が秀麗に近寄ってきていて、ふわっと抱きしめてしまった−−まるで、逃がさない、と言うように……
「−−…姫さん?少しは気分転換になった?」
「…え、ええ、なったわ、ありがとう!オホホ…」
「…で、何がバレるの?」
燕青の声がいつもより優しいのは気の性だろうか?これは花が作り出す幻聴…?それとも……私が花に、燕青に、してやられた…?
「…狡いわよ、って言ったのよ。そんなことされたら、気持ちに収拾つかなくなるじゃない」
「なら、つけなくていいんじゃね?たまには花みたいに、自然に任せてみるのもさ」
そう言って秀麗を抱きしめる燕青は、ひたすら優しい。
あぁ神様、ずっとひた隠してきた気持ちを伝えても罰が当たりませんか…?この人を『欲しい』と言ったら、『離れたくない』と言ったら……
「−−…俺は、姫さんが大好きだ」
秀麗を抱きしめる腕に、力が篭る。溢れんばかりの愛情を一身に感じ、秀麗は口を開いた。
「…ずっと、側に、居て…大好きだから…」
そう言って見上げると、燕青は春の陽射しのように、温かく、愛情に満ちた眼差しで秀麗を見つめていた。
「約束する…」
そう言って交わした初めての口付けは、まるで花の蜜のようで……
−−−お願い、ずっと側で、笑っていて欲しいの……
それは、私の我が儘だけれど、もう我慢出来ないから。
だから、お願いよ……?
<終>