過
□選ばれるのは誰だ
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※ギャグです
それは、とある冬のある日のことだった。
「あーっ!見て見て将臣くんっ!!ケーキがクリスマスの特別価格だって!!」
有川家のリビングで、何気なく開いたチラシを眺めていた望美が、隣でテレビを見ていた将臣を引っ張り、声を上げた。
「おわっ!何だよ!!」
「このお店すごく美味しいんだよ〜」
「はぁ、よかったな。行ってくりゃいいじゃねぇか」
将臣の言葉に、望美はぴくりと揺れた。
そして怖ず怖ずと将臣を見上げる。望美のこういう時の視線は、何かお願いがある時のものだと知っている将臣は、先を促すように望美を見返した。
あはは、と望美は少し照れ臭そうに笑って、言葉を発した。
「実はね…このお店、カップルで行くと割引なんだよねー…」
「………はあ!?」
将臣が望美と同じソファに座っているのを羨望やら憎しみやら憎しみやら憎しみやら憎しみで見ていた弁慶とヒノエは、二人の会話に理解できなかった単語が出て来たことに首を傾げた。
だがしかしそれも将臣の次の言葉によって解決する。
「お前…俺に恋人のフリしろってか?」
「………う…、ごめん…聞かなかったことに…」
言ってから流石に気が引けたのか、望美はチラシを畳もうとする。
その手を止めたのは、ヒノエだった。
「姫君、オレに声をかけないなんてちょっと冷たいんじゃないかな」
「え、ヒノエくん?」
「恋人同士で行くと得、なんだろ?
だったらうってつけの奴がいるじゃないか」
「え?だ、誰?」
「そりゃ勿論――」
「僕ですよね」
にっこりと笑って弁慶が望美とヒノエの間に入り込んできた。
ヒノエはあからさまに嫌そうに眉を潜める。
「んだよ、オジサンは引っ込んでろよ」
「ふふふふ、君こそ。若輩者は引っ込んで下さいよ、湛・増?」
ゴゴゴと不穏な空気が有川家のリビングを包んだ。
将臣は巻き込まれたくない闘いに巻き込まれてしまったと溜息をついた。
「二人とも、そんな無理しなくたって良いんだよ」
望美が困った風に笑う。
将臣は心の中でイヤイヤイヤと突っ込む。
無理も何もやる気満々だ。