過
□知盛さんの忙しい一日
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「知盛ー」
「…………」
「知盛、起きてー!!」
「………」
「朝だって!起きてー」
揺すってもけたぐっても、目の前の大男は動かない。
もぞもぞと身じろぎするだけだ。
望美は眉間に皺を寄せて『それ』を睨む。
「…せっかくいい天気だっていうのに……、もう知らないからね!」
ふいとそっぽを向いて望美はそのまま部屋を出ていってしまった。
その後、知盛はのそりと起き上がり、不機嫌に顔を歪めた。
……起きてはいたのだ。
ただ寝ているままだと望美が執拗に構ってくるから布団から出なかった訳で。こうなっては勿論面白くない。
「…………」
立ち上がり、廊下に出る。
…いない。
部屋に行ってみる。
……いない。
庭に出てみる。
……………いない。
「…………」
イラ、と知盛は胸に押し寄せる不快感を露に自室に戻ると適当な狩衣を乱雑に着て外へ向かった。
ふと、その途中庭の隅の塀に小さな穴を見つけた。
「……………」
知盛は女中を呼ぶとそこを早急に直すよう指示する。
常ならぬ知盛の不機嫌さに女中は竦み上がっていたそうな。
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