アンジェリーク
□救いの手
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―――…アリオス。
ふわ、と。
真白な羽が、舞った。
―――――アリオス…!
ぱちり、と。
そこでアリオスの瞼が上がった。
「チッ…妙な夢だな」
不機嫌に頭をガシリと掻いて立ち上がる。
聖獣の宇宙。
女王の宮殿の中庭の一角。
緑に溢れ、美しい庭。
(―――だが、ここだけだ)
聖獣の宇宙はまだ幼すぎて不安定な状態にある。
聖地は整えられ、サクリアも安定しているが、主星から離れていくほどサクリアが薄れていき、荒廃している惑星も多いのだ。
そんな宇宙を支える栗色の髪の女王は、近頃体調が思わしくないという。
「……エトワールが必要、か」
宇宙の危機を救うという聖天使。
今聖獣の宇宙の女王補佐官レイチェルが神鳥の宇宙の女王達と協力してその存在を探しているらしい。
――もはや伝説の存在に縋るしか、方法は――。
「……」
アリオスは不機嫌に眉を寄せ、くしゃりと前髪を掻き混ぜると、魔導の力を使いふっとその場から消えた。
バタバタバタ、とレイチェルが廊下を急いだ風に走る。
ドレスが足に絡まり、軽くイライラしているようだ。
「――どこに行くんだ?補佐官様よ」
ぴたり、とその足が止まった。
レイチェルが振り向くと、そこには銀の魔剣士の姿が。
「アリオス…!ちょうどよかった、ワタシこれから神鳥の宇宙に行ってくるカラ、アンジェのことお願いね!」
「神鳥…?」
アリオスの眉がぴくりと動いた。
「エトワールか」
「うん。見つかりそうなんだ」
「そうか…」
希望を見出だした明るい表情で笑うレイチェル。
アリオスは対照的に苦い顔をしていた。
急いでいるらしいレイチェルは、よろしくねと手を振り、廊下を再び駆けて行った。
その後ろ姿を一瞥し、アリオスは女王陛下の私室へと足を向ける。