アンジェリーク

□嵐
1ページ/2ページ



「陛下ー!」

「あら、ユーイ」


ひょこりと窓からユーイは女王の部屋を訪れた。
最初こそは窓から来るユーイに驚き心配していた女王も、最近は慣れてしまって当たり前のように応じる。

ユーイの休憩時間の、いつもの風景だ。


「……随分奇抜なとこから来るヤツだな」


ただ今日違ったことは、女王の部屋に別の人物がいたことだった。









「アリオス…」


女王の側にいたのは、「女王の影」として働く男アリオスだ。
女王とはかなり前からの付き合いらしく、二人は親しげだ。
アリオスよりももっと昔、この女王がまだ候補生時代だった頃からの付き合いであるという他守護聖も数人いるが、何というか、アリオスの方がより女王が気を許している感じがする。ユーイの独断ではあるが、他の第三者に聞いても十中八九肯定が返ってくるだろう。
そんな仲だ。
――タイミングの悪い時に来てしまった、とユーイは頭を掻いた。


「今ね、アリオスの報告が終わった所だったの。
お茶にしようかなって思ってたのだけど…。ユーイもどう?」

「……あー、うん、………いや、また今度にするよ」

「え、ユーイ?」


きょとりと首を傾げる女王だったが、ユーイはそのまま窓から近くの木に飛んだ。
がさ、と葉が揺れる音が響いてユーイの心もざわつかせる。

ちらりと振り返れば、女王の隣にいる男と目が合った。


「…」


何かは判らないが、もやもやする。
気持ちを持て余して、ユーイはそのまま飛び降りた。

すると。


「キャッ!何!?」


着地地点に誰かいたらしく、声が上がった。
慌ててユーイが確認すると、そこにあったのは太陽を弾く金髪。
女王補佐官レイチェルだ。


「わっ、ごめんレイチェル」

「ユーイ!アナタどっから降りてきてるのよ!」


ああびっくりした、と髪をかきあげたレイチェル。
彼女は女王の親友だ。
女王に一番近い存在。
ユーイは知らずの内に口を開いていた。


「………なぁレイチェル。アリオスって何なんだろう」

「…………は?」


ユーイの言葉の意図が解らずにレイチェルは首を傾げた。
ユーイは元気のない様子でその場に座り込む。


「なんかさ、仲良いよな。二人」

「……ふーん。で、それがどしたの?」

「なんか、うん……もやもやするっていうか」


はぁ、と溜息をついたユーイ。
これは重症だと察したレイチェルは話くらいは聞いてやるかとその隣に腰を下ろした。
――応援する気はあまりないが。


 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ