アンジェリーク
□決意
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億劫で、面倒で。
やる気が全く起きなかった。
けれどその少女は毎日僕のもとへやって来た。
「セイランさん!今日こそ聖地へ行きましょうよ」
「気が乗らない」
素っ気なく即答すれば少女、エンジュはがっくりと肩を落とした。
彼女と…奇妙なうさぎの話によれば、僕はどうやら聖獣の宇宙の守護聖に選ばれたらしい。
聞けば他守護聖はすでに揃いつつあるらしく、未だ微塵も頷く気配を見せないのは僕だけだとか。
僕はまだ…彼女の宇宙へ行く決心はつかない。
「はあ〜セイランさん…。そんなに嫌ですか?」
「嫌というか…ねぇ…。気が乗らないってさっき言っただろう?」
エンジュが深い溜息をついた。
この少女は強制的に守護聖を連れて来るのをよしとせず、わざわざ説得して回っているらしい。
(いっそ強制的な方に任せて楽すれば良いのにね…)
それに、
そうすれば、彼女は僕に………。
「これは何ですか?」
突然エンジュが声を発したことではっと我に帰った。
見ればエンジュは質素な部屋に無造作に置いてある棚の上のものを見ていた。
「あのさ、人のものをじろじろ見るの、やめてくれないかな」
冷たく一瞥すれば、エンジュは怯えたように肩を竦めた。
「ごめんなさいっ…でもセイランさんこういう…香水とかはお嫌いだと思ってたから…」
「それは…」
シンプルなクリスタルの小ビン。中に入っている香水は…。
「……今日は気分が悪いな…帰ってくれないかな。ここにいても不毛なだけだよ」
「セイランさん…」
「…」
「ごめんなさい…。またお伺いします」
申し訳なさそうに出て行く。あたりすぎたかもしれないがそれよりも一人になりたかった。