ONE PIECE

□大丈夫だから哀しまないで
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(※若干性描写有り。15歳未満はバックプリーズ)


「ごめんな、ルフィ」
そう言って今日もエースはおれを閉じ込める。
閉じ込めると言ったって、別に鍵をかけられたり、特別狭い部屋に押し込まれる訳じゃない。
家の中に閉じ込められてるだけ。
ある日エースは言ったんだ。
「ルフィ、兄ちゃんのお願い聞いてくれるか?」
「夏休みの間、誰にも会わないって約束してくれ」
「家の外にも出ないでくれ」
せっかくの夏休みに、そんな理不尽なお願いをする兄に驚いたが、おれはその時のエースが本当に辛そうな顔をしていたので、ただ頷いた。
おれはエースが大好きだから、そんな顔をして欲しくなかった。
でも、夏休みをずっと家で過ごすのには限界があって、おれはエースが出かけてる間にこっそり外出してしまったのだ。
なるべく早く帰ろうとしたのだが、久しぶりに会った友達と遊び倒してるうちに、すっかり遅くなってしまった。
まずいと思いつつ家に帰ると、そこには怖い顔をしたエースが待っていた。
「……ごめん、エース」
「誰と会ってたんだ」
「ゾロと、ナミと、ウソップ…」
「……約束を覚えているか」
「ちゃんと、覚えてるよ。でも……」
「ルフィ」
「ん……」
「兄ちゃんが嫌いか?」
はっとしてエースを見ると、エースはさっきの怖い顔から、なんだか泣きそうな顔をしていた。
思わずおれは、エースに抱き付いた。
「兄ちゃん、ごめん。大好きだ。ごめん」
もう外には出ないと再び約束して、今に至る。
その間、いろんな人からメールがきたが、適当に返事を濁してやり過ごしていた。
エースは今日、大学の友達と会ってるらしい。それをおれは、意味がさっぱり分からない宿題をしながら待っていた。
あたりがすっかり暗くなってきた頃、玄関から人の気配がしておれは急いで立ち上がった。
「おかえり!」
エースがにっこりと笑って腕を広げたので、おれは迷わず飛び込んでいった。逞しいエースの背中にギュッと腕を回すと、エースはただいまと言って髪を撫でてくれた。
「腹減っただろ?飯にするか」
「おう!」
エースの作ってくれた飯をテーブルに並べて、おれは今日も椅子には腰を下ろさずに、エースの膝に向かい合わせに座る。
「いただきます」
その言葉の後に、エースは皿から料理を取っておれの口に運ぶ。おれはそれをもぐもぐと咀嚼して飲み込む。それが終わると、今度はおれがエースの口に料理を運ぶ。
それを今度はエースが。それの繰り返し。
エースがそうしたいと言ったから、してるだけ。理由なんてそれで十分だった。
夕飯を食い終わると、次は風呂だ。
エースはおれを抱き上げて風呂場まで運び、丁寧に服を脱がしてくれる。自分も脱いで、一緒に風呂に入る。
エースは、家にいるから汚れは少ないはずのおれの身体を、頭の天辺から足の先まで念入りに時間をかけて洗ってくれた。やっぱりエースは、そうしたいからやらせてくれと言った。
おれはやっぱり、ただ頷いた。
風呂から上がると、歯を磨いた。
終わるとソファに寝転んで、テレビをつけた。
流行りのドラマ。綺麗な女優。おれはしばらくそれを眺めていた。
『好きなの。死にそうなほど』
泣きながら女優は演じる。
死にそうなほど好き?
それは、一体どのくらい好きってことなんだ?
頭の中でうんうんと考えていたら、エースが肩にタオルがかかった状態で、上半身だけ裸で歩いてきた。
「何見てんだ」
「ドラマ」
「ふーん」
エースはおれの隣に腰を下ろして、半乾きの髪をタオルでわしゃわしゃと乱暴に乾かす。それを見ていたおれは、またエースの膝に跨り、タオルを奪い取った。
「なぁエース」
「なんだ」
「死にそうなほど好きって、どれくらい?」
「なんだ、そりゃ」
「さっき言ってた。ドラマで」
「ドラマの話かよ………」
「なぁ、どれくらい?」
気になって仕方なくて、教えて欲しくて、エースの首に腕を絡ませた。
エースはしばらくじっとおれを見た後に、そうだな……と呟いて顔を近づけた。
「これくらい、じゃないかな」
エースはそう言って、おれの唇にちゅっとキスをした。
「……それって死にそうなのか」
「まぁ、違うな」
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