5万hit部屋

□D家の事情
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今日(こんにち)の世界は何事もなく、でも相変わらず海賊どもが溢れる世の中だと笑いあったのはいつの平和な時間だったろうかと、その場に居合わせた海兵はひどく憔悴した面持ちでそう証言したという。
爆弾が落とされたのはその日の夜だった。
「そういえばわしにひ孫が出来るんじゃ、センゴク」
場所は海軍本部。
そのセンゴク元帥がいる部屋の、未処理の書類の束を次々と捌いていくこの緊迫としたムードの中、せんべいと渋茶を美味しそうに味わうのはガープ中将である。その中将が言った言葉に、ただでさえ休み返上で仕事をしている元帥はばんっと卓上を鳴らした。
「馬鹿も休み休み言えっ!!ひ孫とは何だ!!というより仕事の邪魔をするなら出ていけ、ガープ!!!」
「なんじゃそんなに熱くならんでも……」
「下らん事を言うな!!だいたい、お前にひ孫だと?ひ孫の意味を知ってるのか?孫の子供だ!!」
それはそうですねと頷く海兵たちは、内心ガープとセンゴクのやりとりをハラハラしながら見守っていた。何だかものすごく嫌な予感がする。嫌な予感というものは、いつの時代もその人を裏切る事はない。
「そんな事知っておる。わしの孫たちに子供が出来たんじゃ」
ん?と思ったのは、その場に居合わせた全員であった。今この人、孫『たち』って言いませんでした?それにいち早く反応したのはやはりセンゴク。いつもの冷静さを欠いた口調でガープに噛み付いた。
「ままま孫たちだと?意味が分からんな。お前の孫は『麦わらのルフィ』だ!!」
「エースも孫じゃ」
その言葉で、みんながサァーと顔を青くした。まさかいやそんなでもまさか。否定と肯定と疑問と焦燥と。その大きな渦が部屋中に巻き起こる中、ついにその瞬間は訪れた。
「ルフィとエースにな、子供が出来たんじゃ」
爆撃だ。それもこっちは何の準備も装備もしてない中での戦争だ。
『麦わらのルフィ』と『火拳のエース』の子供。それはつまり、『革命家ドラゴン』と『海賊王ゴールド・ロジャー』の孫ということになる。
「――――――――っ!!!!」
声にならない叫びが部屋に木霊する。その静寂を破ったのは、せんべいをぼりぼりと噛む音だった。センゴクははっとして近くの部下に命じた。
「っ子供を探せ!!!見つけ次第捕らえろ!!」
「捕らえろと言っても、ルフィはまだ妊婦だから赤ん坊の形さえないぞ?」
「だったら『麦わらのルフィ』を捕らえろ!!!!生死問わずだ!!」
これに不満を上げたのは、やはり祖父であった。
「わしのひ孫じゃぞ?絶対可愛い赤ん坊が産まれてくるに決まっとるのに………」
「可愛いわけあるか!!考えてみろ!!世界最悪どころじゃない命が生まれてくるんだ!!!」
「えー」
「えーじゃない!!」
「良いじゃないですか。ガープ中将のひ孫くらい」
どこからのっそり現れたのか、大将の青キジがガープからせんべいと渋茶をもらっていた。
「今から出産祝いを用意しとかなきゃいけないですね」
「その前にルフィとエースの結婚式の日取りがいつか聞くのを忘れてたんじゃ。大事な孫たちの晴れ姿じゃからな、わしがしっかりせんと」
「なんなら経費使っても良いんじゃありませんか?」
「おお、その手があったか!!」
勝手に盛り上がる部下たちに、センゴクは見たことがないほど青筋をたてて雷を落とした。
そして彼が言い放った一言は、全世界の海兵を海へと駆り立てた。
「探せ!!この世の全ての悪がそこにあると見た!!!!」
その人の真似フレーズだけは言っちゃいけないでしょうと青キジは大きな欠伸を漏らした。

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