□愛するモノ
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それは、なんの前触れもなく耳に五月蠅い音を立てて騒ぎ出した。


まだ、早朝だというのに。








百目鬼は眉間によってしまったシワを押さえながら、枕元の小さな携帯を取った。






相手は非通知。
心当たりはまったくない。
だが、こんな朝早くに叩き起こされた理由を聞き、くだらなければ文句でも言ってやろうかと思ったので、電話に出た。








「…もしもし、」




『………。』





「…もしもし」









『…ドウメキ シズカ。』



変声機か、鼻をつまんでいるのかそれはわからないが、とりあえず電話の向こうの声は普通ではなかった。



そう、ちょうどドラマに出てくる誘拐犯かなんかがする脅迫電話のときのような声だった。










『アナタをアイスルモノを頂きました。』



「…は?」




『返して欲しかったら、今日の午前六時にアタシのいるココまで来てごらんなさい。』







そして電話はきれた。



非通知のため、かけなおすこともできない。






午前六時まであと、三十分。







百目鬼はこの電話を信じるべきかどうか悩んでいた。








「俺を、アイスルモノ…?」








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