□すもも
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つるんと滑らかな表面に、滴る透き通った清き水。

淡い黄色にさす薄い紅。
まるで頬を染める君のような愛らしいそれ。


歯を立ててみると固い抵抗があり、それを破れば爽やかな甘み。

すぐさま襲う皮の酸味。









[すもも]












梅雨もようやく終りを告げ快晴の日が続く。
青の空に、雲が白く目に眩しい。




暑さにうんざりしながら一人部屋でだらけていると、簡単な音で耳慣れた玄関チャイムが鳴った。




ピンポン、ピンポーン







上半身裸で寝ていたので、慌ててそばに脱ぎ捨ててあるTシャツに袖を通す。

この時期文明機械のエアコン様を使うほど、彼の家計簿に余裕はない。
            
「は、はぁーい。」



鍵をかちゃりとひねり、ドアを開けるとそこにいたのは何か包みを抱えた隣の隣に住んでいる笑顔の似合うほっこりとした感じのおばさん。





「あら、こんにちは。」


「あ、ども。最近なんだかあついですねー。」

「そうよねー。夏バテとかしてない?」

「はい。お陰様で。」


これを言ったあと何がお陰様なのだろうと本人は思った。


「あ、それでね、今日知り合いからこれもらっちゃったから四月一日君にお裾分けしようと思って。」


「えっ!?そんないいんですかっ?せっかく頂いたんでしょうに…。」


「いいのよ。上の中田さんにもあげたし。さ、だから貰って。ね?」

「じゃ…、ありがとうございます。」


「じゃあねー。」

「はい。ありがとうございました。」







貰った包みの中はころころとしたすもも。







手にとってみるとひんやり気持ちがいい。
ついさっきまで、冷蔵庫にでもいたのだろうか。



「これ全部一人で食うのもアレだしな……。」



ぱっと見だけでも15個はありそうだ。
とりあえずひとつを洗ってかじってみる。
水道水が顎をつたって滑っていく感覚が心地いい。



「甘酸っぱ〜。」



口をすぼめながら電話の子機を握り、指慣れた数字をいとも簡単に打つ。




「……あ、もしもし?」
 
 
 
 
  
 
 
 
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