+Novel*S
□秋の夜風
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どうやら
もう駄目なようだ――…
なんとか歩いていた私は、よろめきながら地面に倒れ込んだ。
心も身体もくたくたに使い込まれたボロ雑巾のよう。
すっかり疲れて果ててしまったのだ。
立ち上がる力もない。
そんな私に容赦なく夏のジリジリした陽射しが照り付ける。
次第に頭の中に靄がかかり始めた。
濃厚な霧によって、思考が掻き消されそうになり意識がどんどん遠退く。
もう……
眠くて仕方ない――…
ゆっくりと、瞼を下ろした。
『…れ?』
『ど…たの?…いち?』
『…がい…だ』
近くに気配を二つ感じたが、逃げる気もない。
いや、語弊があるな。
逃げる力もない。
ほんの少し、うっすらと目を開くことによって生じた虚ろな視界は、再び暗く閉ざされた。