小説

□ひとりぼっちの運命
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弱い奴に限ってよく群れたがるもの。視界に入っただけで吐き気がする。

それに人間という生き物は群れると大抵碌なことをしない。


だから、

嫌いなんだ。




1日の授業の終わりを告げる鐘が鳴る同時刻。校舎の裏で複数の男子生徒、いや獲物を見つけた僕は案の定煙草を吸っていた彼らを睨み付けていた。僕の学校で堂々と風紀を乱すなんていい度胸してるじゃないか。

僕を見るなり逃げようと背を向ける彼らのくずされた制服を掴み、引き寄せて容赦なくトンファーを振り下ろす。悲鳴や助けを求める声が煩わしい。嗚呼、苛々する。僕はただひたすらに殴った。それでも苛々は止まらなくて、気が付けば残りは一匹。次々と倒れていく仲間達を目の当たりにしていた一人の生徒の瞳からは恐怖の色が窺えるが、僕は構わず彼を殴り飛ばした。そんなことで怯えるくらいなら初めから大人しくしていればいいものを。

全員意識がなくなったのを確認してトンファーに付いた返り血を軽く振り払った。白いワイシャツに所々赤いシミができたけれど群れる草食動物を咬み殺した後はいつもこうなので気に止めることはない。毎度のことながら弱すぎてつまらないなと呆れたように短く息を吐く。どんなに暴力をしても心は晴れないし、ますます苛々は募る一方だ。なんという悪循環。
雲雀は無様にも地面に転がっているモノを無感動に一瞥すると何事もなかったかのようにそこを後にした。



「雲雀さんっ」

応接室という名の自室へ向かう途中で背後から呼び止められ、嫌々ながらも声のする方へ体を向けると心配そうに眉を八の字にしている女生徒の大きな瞳と視線がかち合う。態度には出さないものの少しばかり驚いて数回瞬きをした。この僕に恐れもなく声を掛けてくる女なんてそうそういるものではない。しかし、この女生徒には見覚えがあった。同じ学年に居るあのボクシング馬鹿の妹、笹川京子‥と言ったか。兄妹揃って天然だと有名だったような気もするが自分には関係のない事柄なのでたいして記憶に留めてはいない。笹川兄のほうはいつも煩く、何故か僕に馴れ馴れしく接してくる謎な人間だ。因みに言ってることも理解出来ない。きっと脳ミソも筋肉でできているんじゃないか、と失礼なことを思ってみたりする。


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