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□共犯者じゃない
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際限なく広がるこの世界

お前は私が愛するこの美しい世界の一つじゃないか。


この世界に最早俺に抵抗する勢力など微塵もない。

すべて俺が壊した。

憎しみを集めながら、




この道に進むきっかけであり、しかし枷でもあった我が愛する妹すら

俺を罵り、憎んだ。


そう、全て計画通り。


ゼロ・レクイエムへの序章を踏み出したわけだ。





「本当に良いのか…ルルーシュ、」

するりと零れた言葉は本当にルルーシュに投げかけているのか?
C.C.は自嘲しながら自分に背を向けているルルーシュに問いかけた。

「…今更だな、C.C.…お前も賛同していなかったか?」
真っ直ぐ突き刺さるようなお前の声、
「…ああ」
それだけを絞り出し、C.C.はルルーシュに近づく。
「どうした?お前らしくない……」
ルルーシュは薄笑いでC.C.を見る。

「ギアスは…王の力は人を孤独にさせる」

ぽつりと呟くC.C.、
いつものポーカーフェイスではなく、どこか寂しげな表情で、ルルーシュは思わず真顔になる。しかし直ぐ悪の笑みを浮かべ言った。
「…ゼロ・レクイエムは人々に¨あした¨を迎えさせる為の終焉であり始まりでもある。そして始まりに俺は要らない。俺は世界を壊した…」
「お前がいなきゃ…この世界は変わらなかっただろう?お前が作らなくてどうする?」
自分でも必死だと思えるくらい、C.C.は早口で言った。

ルルーシュは受け流すように笑う。
「…どうしたんだC.C.…本当に……今日は嵐か?」
冗談を言って再び背を向けようとしたルルーシュにC.C.は呼び止めた。
「ルルーシュ、」
「…」
複雑そうな顔だった。
「私の願いは…」

「お前がこの世界にいること」

ルルーシュの目が一瞬驚きに開く。
「…死んでほしくない。私はお前を」
ルルーシュは続きを言わせなかった。
「C.C.!」
大声に体が跳ねた。
「俺は世界を壊すだけだ。憎しみは全てこの俺が引き受ける。…そしてその俺が消えることで¨あした¨が来る。…スザクもスザク自身のこれからを受け止めてくれた上で剣となり戦ってくれている。…今ここで歩みを止めたらどうなることか、C.C.…お前が1番解っていると思っていたんだが」
「…、」
ルルーシュは再び背を向けた。

「…解っている。でも、これが願いだ……」

ルルーシュがどんな表情をしているかは分からない。
C.C.はルルーシュの背中に顔を充てる。
「…お前は」
呆れたような声が聞こえた。

「…愛してるルルーシュ、」
それだけ囁き、C.C.は離れた。


共犯者ではなく

恋人として。



気がつけばC.C.は庭の奥深くにある沼に来ていた。城も屋根しか見えず、辺りは鬱蒼としている。

「ルルーシュ、」

何度呼んだだろうか、

クスリとC.C.は笑った。

愛おしい気持ち
なんて久し振りなんだろう。

C.C.の頬に真珠のような涙がぽろぽろ伝い落ちる。

愛してくれるなら誰でも良いと思っていた…

でも
ルルーシュ、

お前だけに愛されたい

「我ながら…傲慢だな」

誰でもなく、

マオでもなく、



C.C.はそのまま沼を眺め、夕暮れまで過ごした。





「くそっ」
小さく悪態を吐いて、ルルーシュは執務室へ向かっていた。

あの女だけはああいう行動はしないと思っていた。

ぐらつかないようにナナリーにも会っていないというのに、

何を考えているんだ…

「…お前を、」
C.C.が何を言おうとしていたのかは俺でも分かっていた。

執務室に入って絶叫した。

「共犯者じゃないのか!」

苦しい。
俺は…俺は…

「C.C.…!」
机を叩き、うなだれる。

抑え込んできた様々な気持ちが溢れてきそうで…堪らなかった。

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