彼女の言うことには

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中学3年間の課程を終えてお世話になった学校と教師と
それぞれの道に進む友人にさよならをする大事な日。
卒業式――。

そんな日でも彼女、真白木雪乃は黒のローブ姿に
フードを被りウサギのリュックを腕に抱き卒業式を受けていた。


「あー終わった終わった〜」


特に別れを惜しむ友人もいないし写真を取るような用事もない
さっさと帰って家でゴロゴロでもしようと宇佐美さんを
背負って校門を出ると誰かのお腹にぶつかってしまった。


「すいません」


頭を下げて避けて進もうとしたら相手も動いて私が反対に
移動すると相手も再び移動して『通してください』と言えば
『やだやだ』とお菓子の食べ溢しが降ってきた。


「雪ちんとお別れなんてやだ」


敦君の長い腕が腰に回ってふわっと宙に浮く私の体。
片手で抱き上げるとは。


「敦君、恥ずかしいんで下ろしてください」


「やだやだ…下ろしたら雪ちん帰っちゃうしー」


「ん〜そうですね〜」


「だからこのまま」


「わかりました。じゃあ敦君の気が済むまで抱っこしてていーよ」


「そーやってと兄妹みてーだな」


「下手したら親子ですよね」


「敦君ロリコン〜」


「ロリコンじゃねーし」


「じゃあショタコン〜」


「雪ちんひねりつぶしてほしいの?」


「…敦、雪乃を下ろせ」


そう赤司君の声で言えば敦君は『ちぇー』と言って私を下ろした。
ふむ、やはり赤司君をチョイスしたのは大正解だったか。


「あれ、赤ちんいないじゃん」


「雪っちの声マネっスよ紫原っち」


「本物かと思った」


「当たり前なのだよ。俺の声マネは口元さえ見られない限り絶対にばれん」


「おおーミドチン」


敦君がパチパチと拍手をする。


「ってゆーかこれ何の集まりですか〜?バスケ部揃って集団下校?」


「違うっスよ」


「一緒にいられるのは今日までだからって赤ちんがみんなでマジバ行こうってー」


「へ〜それはよかったですね、私は帰りますね〜」


歩き出すとくんっと腕を引っ張られ『放してくださいよ〜私は帰りたいんです〜』
と振り向けば赤い色。
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