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□少年は、還る(前編)
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南の流魂街の外れ――




何の変哲も無い吹き曝しの荒地に、青年と少年二人の人影があった。
見渡す限り灰色一色のこの場所で橙と白銀という色を持つ彼等の存在は一際異彩を放っている。


「どうだ?」


橙――こと黒崎一護が、白銀に向かって話し掛ける。
すると、白銀――こと日番谷冬獅郎はしばらく辺りを見渡していたが、静かに首を振った――横に。


「そっか。駄目か……」

「……………すみま、あ、じゃなかった。スマン?」


あからさまにがっくりと肩を落とす黒崎に申し訳なくなり日番谷はしゅん、と項垂れる。


「ん?いや、お前のせいじゃねーよ。気にすんな」


くしゃ、と日番谷の頭を黒崎は撫でる。

「……………えと。あ、ああ?」


首を傾げながら言う日番谷の口調に黒崎は苦笑の表情を浮かべると、日番谷の頭に手を置いたまま。


「なあ――」

「な、何?」

「別に、無理して言葉遣い変えなくていいんだぜ?」

「………………やっぱり、可笑しいですか?」

「っていうか、お前が言い難そう」

「でも………でも、俺はこうしたいんです――じゃない、だ」

「そうか……じゃあ、頑張れ」

「はいっ!」


日番谷はにっこりと笑う。
彼の満面の笑顔に黒崎も破顔すると、彼の頭に置いたままの手を今度はやや乱暴に掻き回す。


「“はい”じゃないだろ」

「あ、しまった」


お互いに顔を見合わせ、噴き出して笑い合った。


「じゃ、帰ろっか」


一頻り笑い合った後、黒崎が言う。
既に歩き始めている黒崎の後を日番谷は慌てて着いて行く。
前を歩く黒崎の背中を見詰めながら、日番谷は未だ頭に残っている彼の大きくて温かい手の感触を思い出し、気付かれないようにそっとはにかんだ。

(一護、さんは優しいな……)

そして今度は溜息を零す――やはり黒崎には気付かれないように。

(それにひきかえ、僕は……)

 なんて、浅ましくて醜いんだろう――

 『彼』は――…

 こんな気持ちになったりはしないのだろうか。





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